今さら聞けない気候変動!書籍『気候変動を学ぼう』に学ぶ基本のキ

気候変動の本と机

いろいろな場所で見聞きするようになった「気候変動」ですが、私たちの生活や未来には実際のところ、どんな影響があるのでしょうか? 今回は、2023年秋に出版された、気候変動対策に取り組む世界的なネットワーク「クライメート・リアリティ・プロジェクト・ジャパン」による書籍『気候変動を学ぼう 変化の担い手になるために』の内容を紹介しながら、気候変動と対策の「基本のキ」をお伝えします!

気候変動を学ぼう表紙
著者:平田仁子、豊田陽介、ギャッチ・エバン、三谷優衣子
編者:クライメート・リアリティ・プロジェクト・ジャパン
出版社:合同出版
刊行日:2023年11月

1. 気候変動は「環境問題」だけではない

気候変動は「環境問題」の一つとみなされがちですが、気候変動の影響を受けるのは自然環境だけではありません。気候変動が進むと社会、経済、生活に影響がおよび、私たちの健康、安心、安全が脅かされます。

年々暑くなる夏と熱中症の増加、また、世界中で起きている自然災害を思い出してみてください。今、目の前に起こっている危機的な状況の中には「気候変動」により引き起こされているものも少なくありません。そして今、その件数、頻度は増え続けています。

そして、こうした気候変動の原因は、人類が大量に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出し続けてきたことです。これにより地球の気温が上がり、極端な高温や洪水、干ばつ、森林火災などがより激しく、よりひんぱんに起こっています。このまま温室効果ガスが増え続けるとさらに地球の気温が上がり、影響が破壊的になると言われており、早急な対策が必要です。

それができるのは、気候変動の原因を作り出した私たち自身。人類が、自らの手で解決する責任があります。

参照:環境省 IPCC第6次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約 (2023年11月時点)

参照:『気候変動を学ぼう 変化の担い手になるために』「第1章 気候変動と私たちの社会の関わり」(P9~20)、「第2章 深刻化する気候変動に対する私たちの責任」(P21~32)

2. 対策のポイントは「緩める」と「備える」

森
気候変動の対策は、大きく分けて2つあります。1つは温室効果ガスの排出量を「緩める」ための緩和策。温室効果ガスの削減につながる省エネや再生可能エネルギーへの転換、CO2を吸収してくれる森林を増やすことなどが、これに該当します。

もう1つは気候変動の影響に「備える」ための適応策。気温上昇の影響を受ける生き物の保護、異常気象で氾濫しそうな河川や海岸の補強、猛暑に耐える作物の栽培などがこれに当たります。

「緩める」緩和策も「備える」適応策も、一人だけではできないことばかり。協力して実行していく必要があります。

参照:『気候変動を学ぼう 変化の担い手になるために』「第3章 気候変動を防ぎ、影響を緩和するためにできること」(P33~49)

3. 対策すると、様々な「いいこと」が!

日本では「省エネ」と聞くと冷暖房の設定温度を高く・低く調整するなどの我慢を奨励されることが多いため、気候変動の対策は「生活の質を引き下げる」と捉えられる傾向がある、とのことです。(『気候変動を学ぼう 変化の担い手になるために』p.44 参照)

しかし、実際には健康や生活の質を上げる対策も多くあります。例えば、断熱性能の高い住宅に住むと長期的なCO2削減につながることに加え、住んでいる人がより快適に暮らすことができます。また、気候変動対策を進めることで日本各地の独自の生態系が守られ、土地の人々や文化を受け継ぐことにつながっていきます。対策は、日々を楽しく暮らすことと直結しているのです。

さらに、対策を実施しなければ気候変動が進み、経済に深刻な影響を及ぼすという指摘もあります。実際に国際労働機関(ILO)は、気候変動による熱ストレスにより2030年までに世界の労働時間が2.2%失われ、8000万人のフルタイム雇用に相当する生産性が低下すると発表しています。気候変動対策は経済・社会の生産性を保つためにも重要です。

参照:『気候変動を学ぼう 変化の担い手になるために』「第3章 気候変動を防ぎ、影響を緩和するためにできること」(P33~49)

4. 大切なのは行動すること。みんなで「社会変革」を生み出す

ワタシのミライの写真

2023年9月に渋谷でおこなわれた、再エネ100%と公正な社会をめざすアクション「ワタシのミライ」のパレードに参加している、クライメート・リアリティ・プロジェクト・ジャパンのメンバー(写真提供:クライメート・リアリティ・プロジェクト・ジャパン)

「なるほど、それなら今日から省エネを始めよう」と思った方、ちょっと待ってください。それももちろん大切なアクションですが、実はもっと大事なことがあります。それは、社会を変えていくこと。気候変動は、世界中の社会・経済に大きな影響を及ぼすので、一人の力では対策は間に合いません。

『気候変動を学ぼう』では、本の後半で周囲の人たちと一緒にできることの実践例を紹介しています。その一部を以下でご紹介します。

  • 省エネのアクションをするなら、その内容をまわりに話して興味をもってもらう、誰かと一緒にチャレンジしてみる
  • 選挙で、候補者の気候変動対策に関する主張を調べたうえで投票する
  • パブリックコメントなどを通じて、自分の住む自治体に働きかける
  • グリーンジョブ(気候変動対策につながる仕事)を選ぶ
  • 友人や家族と気候変動について話す

『気候変動を学ぼう』では、実践例のアイデアのあとに、すでにアクションを起こしている人々が紹介されていて、読み進めながら、明るい気持ちになれました。

参照:『気候変動を学ぼう 変化の担い手になるために』「第6章 多様な主体のさまざまな取り組み――自治体・企業・大学・若者・NGO」(P74~86)、「第7章 持続可能な社会の姿と自分たちにできること」(P87~103)、「第8章 脱炭素社会に向けて動き出した人々」(P104~129)

今回のコラムでは書籍『気候変動を学ぼう 変化の担い手になるために』のエッセンスを、ぎゅっとまとめてご紹介しました。どの章からも気軽に読めるので、ぜひ気になる内容から順に読んでみてください!

【関連ページ】気候変動と食料生産のつながりを知ろう!日々の食生活で行える取り組みを紹介

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曽我 美穂

曽我 美穂(そが みほ)。2008年にエコライター・エディター・翻訳者として独立。雑誌やウェブサイトで編集、撮影、執筆、翻訳などをおこなっている。主なテーマはエコな暮らしやSDGs、環境問題。私生活では2009年生まれの娘と2012年生まれの息子の二児の母でもある。現在、富山県在住。個人サイト:https://sogamiho.mystrikingly.com/