実りの秋、刈り取られた稲を脱穀して米を収穫した後には大量の藁(わら)が残ります。その残った稲の藁を、昔の人はさまざまな形で暮らしに取り入れています。例えば、わらぶき屋根の材料になったり、刻んで土とともに練りこんだり。また、藁を細工して、草履(ぞうり)や茣蓙(ござ)、締め飾りを作るなど、稲の副産物を余すところなく使い切るところに、日本人の米づくりへの想いが感じられます。
そこで今回は、秋に稲刈りを終えた親戚から稲わらを譲ってもらい、日本に伝わる暮らしの道具作りに挑戦しました。家にある物と稲わらだけで、誰でも簡単に作れる「ミニ藁ほうき」の作り方を紹介します。
古くから暮らし中で取り入れられてきた稲わら
現在は稲を刈り取ると同時に、コンバインで脱穀し、細かく切り刻んでそのまま田んぼにすき込んだり、畑に播いて肥料にしたりすることが多いそう。他にも家畜の飼料や堆肥にする、畜舎の敷床に敷く、野菜などを栽培する際のマルチ資材として活用するなど、農業や畜産の現場において、さまざまな用途で使われています。
また、切り刻まずに、そのまま刈り取られ、もみを取った状態の稲わらは、水を含ませることで自由自在に形を作り加工できるので、昔は「草鞋(わらじ)」「草履」「茣蓙」などの日常で使うものや、正月の「しめ縄」などの飾り物に使われてきました。また、保湿性・通気性・吸湿性に優れた素材なので、米俵やおひつ入れなどの食料を保存する際にも利用されていました。
稲わらはどこで手に入るの?
藁はホームセンターや通販などで、気軽に手に入れることができます。インターネットで 「稲わら 通販」と検索すると、取り扱っているECサイトが見つかります。圧縮されているものやカットされているものなど、用途に合わせて選べます。
家族などの親しい間柄であれば「農家さんにタダで譲ってもらう」こともできるかもしれません。しかし、そうでない場合、お願いするのは少し考えたほうがよさそうです。稲刈りの際、多くの農家では、コンバインを使用して刈るので、その段階で稲わらは細切れになった状態で排出されます。細かく裁断しない状態の稲わらを取ることも可能ですが、一部の稲だけそうした刈り込みを行うのは手間がかかります。基本的に、コンバインで細かく切られた稲わらは、機械からそのまま田んぼにまかれ、土をよくする肥料として使われています。
他の方法としては、稲を自分で育てる方法もあります。米作りを学ぶよい機会にもなるので、自宅のバケツなどを使って、親子で稲作にチャレンジしてみるのもおすすめです。
束ねて切るだけ、超簡単!ミニ藁ほうき作りに挑戦
用意するもの
基本的に稲わら以外は家にある材料と道具で作ることができます。稲わらは水気があるとカビの原因になるので、きちんと乾燥させたものを使う必要があります。稲わらは、稲を根元から刈り取って乾燥させ、穂を取ったもので、部位により「ハカマ(葉)」「カン(茎)」「ミゴ(穂首)」と呼ばれます。ほうきや筆を作る場合は、穂首の部分で、モミが取り除かれた穂がある“ミゴ”を使います。
- 稲わら:ほうき1本につき、ミゴ200本程度
- 紐:好きな色の糸や毛糸など
- はさみ:藁をざっくり切れる大きさのもの
- 敷物:新聞氏やレジャーシートなどの上で作業すると片付けが楽
作り方
- 束を作る:約30本くらいを1束とし、束を7つ作ります。
- 紐をかける:1束目に紐を5~6回ほど巻き付け、くるくると引き締めるようにねじります。束を半分に割り、紐を間に通して反対側に出し、紐を引っ張って再び引き締めます。
- 1束ずつ順に巻いていく:2束目を1束目の紐の出ている側と逆に重ね、再び同じように巻いていきます。巻き終わったら、2つの束の間を通して紐を反対側に出し締めます。3束目以降も同様に巻いていき、最後の7束目が終わったら、糸の端は束の中に入れ込む。
- 持ち手部分に紐を巻く:片方の端の紐を約15~20㎝ほど残し、7本目の結び目から数センチ離れた場所に巻き結びます。ほうきの先とは反対方向に隙間なく巻き、最初に残した紐も一緒に巻き込んでいきます。5㎝ほど巻いたら最初に残しておいた紐と一緒に、ほどけないように本結び(固結び)します。さらに紐の先端を止め結びします。
- 形を整える:仕上げに、ほうきの穂先と、持ち手の先をはさみで整えます。
ミニ藁ほうきの用途
ミニ藁ほうきは、窓の桟や机・棚の上などの掃除に使うなど、用途は自由です。我が家では、リビングの他にも、子どもの学習デスクや玄関の下駄箱の上など、掃除したい場所に分けて使っています。使う場所の近くにかけて置くと、ちょっとしたインテリアにもなります。
稲わらのミニほうきは、軽くて使いやすく、床や家具も傷つけないので、掃除道具としても優秀です。また、自然素材のナチュラルな風合いが、インテリアにもよく馴染みます。紐をかける作業が少しだけ難しいかもしれませんが、大人の手伝いがあれば、子どもでも簡単に作ることができます。親子でもチャレンジしてみてください。
丹精込めて作ったお米を収穫した後、刈り取った稲を暮らしの中で役立てていく。自然のめぐみに感謝し、何一つ無駄にしないで使い切るという昔の人の姿勢を、私たちの暮らしの中にも取り入れていきたいですね。
【参照書籍】「つくって楽しむわら工芸」
Yoko
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