使いきったお気に入りの香水。空になったガラス瓶を手のひらにのせると、思ったよりずっしりと重い。まだきれいなのに、次に向かう先はゴミ箱です。(ちょっともったいないな)——そう感じて、でもすぐに忘れてしまう。そんな小さな引っかかりに、あなたも覚えがあるかもしれません。
その「もったいない」に、ひとつの答えがあります。詰め替え(リフィル)です。ドラッグストアやコスメカウンターで文字は見かけるけれど、(気になるけど、ちょっと面倒そう)と、結局いつもの通常品を手に取ってしまう——もしそうだとしても、大丈夫。そのためらいは、あなただけのものではありません。そして一度選んでみると、効果は思っている以上かもしれません。
たとえば香水のYSL Libre。50mlのボトルを2本買い替える代わりに、100mlの詰め替えを1回買うだけで、ガラスは58%、プラスチックは59%、紙は42%も減らせるといいます(いずれも同社試算)。金属の追加使用にいたってはゼロ。一年、二年と買い替えを重ねるほど、手放さずに済む瓶は静かに積み上がっていきます。たった一本の選び方が、それだけの差になるのです。
あなたのためらいは、ごく自然なもの
「詰め替えって、なんとなくハードルが高い」。その感覚には、ちゃんと理由があります。L’Oréalの消費者調査では、そもそも詰め替えが売られていることを知らなかった人が42%、店頭で見つけられなかった人が43%、「面倒そう」「汚れそう」というイメージを持つ人が41%。つまり、興味はあっても最初の一歩でつまずいている人が、これだけいるということです。
これは、消費者の意識が低い、という話ではありません。British Beauty Councilが学生3,533人に行った調査では、73%が「ブランドの詰め替えの選択肢が足りない」と感じ、4人に1人以上が「詰め替え商品は必ずしも使いやすくない」と答えています。
売り場の側にも事情があります。詰め替え用と通常の容器を両方並べれば棚のスペースは倍必要になり、詰め替えステーションには専用の場所や衛生管理も要る。要するに、「見つけにくく、選びにくい」状態が、まだ残っているだけなのです。だから、これまで通常品を選んできた自分を、責める必要なんてありません。ためらうのは、むしろ当然のことだと思います。
それでも、選択肢は静かに増えている
ただ、風向きは確実に変わりつつあります。世界最大の化粧品企業L’Oréal Groupeは、詰め替え可能な商品を2019年から2025年にかけて3.7倍に増やし、詰め替えを推進するキャンペーン「#JoinTheRefillMovement」は、いまや4事業部門・18ブランド・28製品にまで広がりました。同社の詰め替え商品の世界売上は、2025年に前年比34%増加。調査会社Mintelによれば、詰め替え関連をうたう新製品の割合も、2019年の1.8%から2024年上半期には4.8%へと伸びています。
買う人も、着実に増えています。Mintelの調査では、関心の高い美容消費者の39%が過去1年間に詰め替え商品を購入。冒頭の学生調査でも、ブランドを選ぶときに「詰め替えができるか」を重視する人が52%と、「天然由来成分か」(48%)や「脱プラ包装か」(36%)を上回りました。つまり、次にあなたが売り場で探すときには、去年より見つけやすくなっている可能性が高いのです。
選ぶ理由は、「エコ」だけじゃなくていい
ここで少し、肩の力が抜ける話を。詰め替えを選ぶ動機は、必ずしも「環境のため」でなくてかまいません。L’Oréalの調査では、「節約になるなら詰め替えを買う」と答えた人が87%にのぼりました。中身だけを買う詰め替えは、重い容器のぶんだけ価格が抑えられることも多く、お財布にもやさしい。エコは、その”おまけ”くらいの気持ちで十分なのです。
「かわいいから選ぶ」も、立派な理由になります。デオドラントで知られる詰め替え特化ブランドWildは、カラフルなケースや、ファッションブランドLoveShackFancyとのコラボで、詰め替えを「我慢して選ぶもの」から「思わず飾りたくなるもの」へと変えました。詰め替えボトルには堆肥化できる植物・微生物由来素材「Vivomer」を使うなど、中身の環境配慮も抜かりありません。安くて、かわいくて、ゴミも減る。そう考えると、試さない理由のほうが、だんだん少なくなってきます。
編集後記
「私ひとりが詰め替えを選んだところで」——そう思う日も、きっとあります。でも、シャンプーや洗剤の詰め替えが、いつのまにか暮らしの当たり前になったのも、そんな「ひとり」の選択が静かに積み重なった結果でした。最初は少し面倒に感じても、「安いから」「ゴミが減るから」と続けるうちに、いつしか詰め替えのほうが自然になっている。化粧品や香水も、たどる道はきっと同じです。
だから、大げさな決意はいりません。次にコスメを買い替えるとき、棚の前でほんの数秒、「詰め替え、あるかな?」と探してみる。あの、手のひらに残った瓶の重さを思い出しながらの——その小さな一歩が、案外いちばん確かな近道なのだと思います。
- 【参照記事】L’Oréal Groupe プレスリリース「#JoinTheRefillMovement」(2026年6月)
- 【参照記事】YSL Beauty 公式製品ページ「LIBRE Eau de Parfum」
- 【参照記事】Mintel「The Future of Beauty Packaging」
- 【参照記事】British Beauty Council / Sustainable Beauty Coalition「A Journey to Reuse」(WRAP)
- 【参照サイト】Wild 公式サイト
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