電気自動車(EV)は普及する?国内の現状や取り組みを紹介

EV

政府は2020年に開かれた臨時国会で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明しました。今では、「カーボンニュートラル」といったキーワードで、さまざまな企業や個人が取り組んでいる課題です。

なかでも自動車分野は、2021年1月に開かれた通常国会の施策方針演説に「2035年までに電動車100%を実現する」という内容が含まれており、大きなインパクトを与えています。国内基幹産業のひとつである自動車業界にとって、「100年に一度の大転換期」と言われる変化がすでに始まっているといってもよいでしょう。

そこで本記事では、EV普及が必要な背景や国内のEV分野の現状をみていきます。

電動車普及の必要性と課題

世界中がEVシフト(電動車への移行)に注目する最大の理由は、「地球温暖化」や「ピークオイル」といった社会問題です。これらの課題を解決するため、従来のガソリンエンジン車の持続可能性は低いと見られています。

ピークオイルとは

「ピークオイル」とは、石油生産量の頭打ちのことです。石油は地下資源のため、いつか枯渇してしまいます。消費量が供給量を超える直前が”ピーク”であり、以降は供給量(生産量)が少しずつ減少します。いつか枯渇する資源の状況を知るために“ピークはどこか?”を注意深く観察しておく必要があります。

ガソリン車以外の自動車と普及に対するハードル

ガソリンに代わるエネルギー供給の安定性を考慮すると、自動車はEVがベストではないかというのが現段階での見解です。ガソリンや電気以外となると、バイオ燃料などの分野も研究が進んでいますが、天然ガスや石炭、水力、太陽光、風力といった多様な発電方法が確立されている電気と比較すると限られた選択肢しかありません。

一方で、EVは走行中にCO2を排出しない代わりに、発電によるCO2排出が懸念されています。国内のベース電源は多くが火力発電によるものです。そのため、そもそも日本の電力施策として、自然エネルギーや再生可能エネルギーをいかに増やすかという課題もあります。

ほかにも、EVをガソリン車のような手軽さで乗るためには、本体価格の高さや充電インフラ、充電速度、走行距離の短さ、廃車後の安全な処理方法など、多くの課題が残されています。

株式会社ファブリカコミュニケーションズが2022年6月に実施した「電気自動車に関するアンケート」(有効回答数:300人)によると、2位以下に約2倍もの差を付け「環境に優しいこと」(213票)が電気自動車のメリットとして選ばれています。

生活にも影響する「EVシフト」、国内の現状や取り組みを紹介

一方で、電気自動車を買わない理由としては、1位「価格が高い」(191票)、2位「充電ステーションが少ない」(130票)、3位「充電時間が長い」(93票)がTOP3となっています。

生活にも影響する「EVシフト」、国内の現状や取り組みを紹介

EV普及を進めるための取り組みやサービス

自動車は生活に大きな影響を与えるため、「環境に優しい」だけではなかなか普及が進まないというのが実情。そのなかで、EVをよりスムーズに普及させるための取り組みが積極的に行われています。

「J-クレジット制度」と連携し経済価値を可視化

生活にも影響する「EVシフト」、国内の現状や取り組みを紹介

画像出典:J-クレジット

「J-クレジット制度」とは、温室効果ガスの排出削減や吸収効果のある再生可能エネルギー発電や、省エネ機器の導入、森林経営といった取り組みを国が認証し、削減量や吸収量をJ-クレジットとして販売することで、購入者が同様の削減活動を行ったとみなされる制度です。

気候変動対策のコンサルティングサービスを提供しているWaara(ワーラ)株式会社はこのJ-クレジット制度を活用し、EVやFCV(燃料電池自動車)の補助金等に活用できる再エネ由来のJ-クレジットを、クレジットカードで簡単にオンライン購入できるサービスを展開しています。

購入した人は「再エネ電力証書」を発行してもらうことで、EVやFCV車両、設備への補助金申請に利用できるという仕組みです。

公共施設への充電スポット設置

生活にも影響する「EVシフト」、国内の現状や取り組みを紹介

Terra Motors(テラモータース)株式会社は、22年4月より導入無料のEV充電スポット「Terra Charge(テラ チャージ)」設置事業をスタート。さまざまな公共施設や賃貸住宅などに、次々と導入しています。直近数ヶ月だけでも、以下のような事例が挙げられます。

  • 先着100基のEV充電インフラをフィットネスクラブに無償提供
  • 駐車場DX事業を展開する株式会社いえらぶパークと提携し、EV充電スポットの検索情報を提供
  • 株式会社レオパレス21が管理する賃貸住宅施設の駐車場等にEV充電インフラの提供を開始
  • 先着100基のEV充電インフラをホームセンターの駐車場等に設置
  • 先着100基のEV充電インフラを郊外型レストランの駐車場等に設置

また、ユビ電株式会社は大和ハウスパーキング株式会社が運営する駐車場にて、100%再生可能エネルギーの電力が使えるEV充電スポットサービスを開始しています。このようにインフラ整備とカーボンニュートラルの同時対応を進めている事業者もいます。

シェアリングエコノミーの活用

生活にも影響する「EVシフト」、国内の現状や取り組みを紹介

画像出典:日産自動車

カーシェアリングやサブスクリプションモデルといった利用形態も普及方法のひとつとして注目されています。トヨタ自動車の「KINTO(キント)」や日産自動車の「ClickMobi(クリックモビ)」には、車本体のほかに、充電設備やメンテナンス等のサービスも含まれており、EV初心者でも初期費用を抑えながら気軽に利用できるプランが用意されています。

メリットは費用面だけではありません。充電設備や充電で発生した温室効果ガスを事業者側で緩和したり、環境価値を可視化し、利用者にカーボンオフセットを促したりといった展開も実践しやすいでしょう。

また、カーボンニュートラルをはじめとした「環境価値」を可視化できる個人向けクレジットカード「SAISON CARD Digital for becoz(セゾン カード デジタル フォー ビコーズ)」のような金融スキームも含めて検討することで、より普及が進むかもしれません。

近い将来やってくる自動車環境の「ルール変更」を見据えていこう

EVを取り巻く国内の現状と普及推進の取り組みをエンドユーザー目線で紹介しました。EVをはじめとする脱炭素自動車は、数ある車種のひとつではなく「移行せざるをえないもの」という見方が年々強まっています。

前例のないスピードで変化する自動車を取り巻く環境のなかで、個人消費者がどのように向き合えば良いのか、ヒントになれば幸いです。

【参照サイト】自動車のEVシフトって本当に気候変動の解決策なの?その疑問に答えます! – 国際環境NGOグリーンピース
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斉藤雄二

「フレキシタリアン」を実践している静岡在住のWebライター。これまでモノ系、テクノロジー、サイエンス、ビジネス、ファッションといったジャンルで執筆してきました。趣味は読書とフィットネスと料理。最近は愛車のfiat500でドライブに出かけるのが楽しみです。