近年、プラスチックごみの処理や衣服の大量廃棄問題など、モノが不要になった後の処理について、さまざまなところで取りざたされている。そんな中、サトウキビやトウモロコシ等の糖やデンプンを原料にした素材で作った生分解可能なルームウェアが、Bioworks(バイオワークス)株式会社から登場した。
京都に本社を構える同社は、創業以来「ポリ乳酸」の実用化に取り組んできた。ポリ乳酸は、サトウキビやトウモロコシ等の糖やデンプンを原料に製造されたバイオマスプラスチックのこと。ポリ乳酸は、20年前に「環境に優しい、夢のプラスチック」として世界から注目されたが、耐熱性と成形性の弱さから一般に浸透することはなかった。
Bioworksは研究に研究を重ねて、この度、改質剤にポリ乳酸を合わせた高品質かつ高機能な「PlaX Fiber(プラックス ファイバー)」素材を生み出すことに成功し、今年6月にPlaX Fiberを用いた「Bio Towel(バイオタオル)」を、そして今回「Bio series(バイオシリーズ)」のルームウェアを商品化した。
「ポリ乳酸を溶かして、糸を引いているのがPlaX Fiberで、環境負荷が低い点が特徴です。素材そのものが弱酸性であるうえに、速乾性や抗菌性にも優れていて、肌にも地球にも優しい素材となっています。課題であった耐熱性と糸の染まりにくさが改善されたことで使いやすくなりました」と、Bioworksの開発担当者・吉井 武蔵志(よしい むさし)さんは話す。
バイオタオルはコットンにポリ乳酸を混ぜ合わせて作られており、人肌と同じ弱酸性で肌触り抜群だ。吸水性は従来のコットンタオルよりも高く、ポリ乳酸自体が抗菌性と消臭性に優れているため、部屋干しをしても臭わない。タオルの名産地である愛媛県今治市にある信頼と実績のある工場で生産しているので、品質にも期待が持てる。
今回販売が開始されたバイオシリーズのルームウェアは、半袖、長袖それぞれのTシャツと9分丈パンツの合計3種類。表地には抗菌性や消臭性、速乾性に優れたPlaX Fiberを採用し、裏地には肌触りの良いスーピマコットンを使った接結組織のジャージーを採用している。
「PlaX Fiberとスーピマコットンを採用した素材は、コットン100%の生地と比べて生産時の水の消費量が約45%も低く、ライフサイクルアセスメントは非常に優秀。肌触りも良いうえに、速乾性も抜群です。57℃のコンポスト環境下で生分解にも成功したポリ乳酸がスムーズに自然に還れるよう、分解できないファスナーやボタン不使用のデザインにこだわって作っています」と吉井さん。
バイオタオルについては、定期的(3カ月に一度)にタオルを届け、使い終わったタオルは返送する、タオルのサブスクリプションサービスを開始している。回収されたタオルはコンポストやリサイクルなど、Bioworksがごみにならない方法で処理をし、廃棄物ゼロを目指す。今後は、タオルだけでなくルームウェアを含めた同社の製品を回収し、生分解できるようにしていく予定だ。
バイオタオルとバイオシリーズのルームウェアは、環境配慮型の素材を使用した製品が揃うECサイトの「ZAIMA(ザイマ)」で購入できる。
同社はこれから、多様なアパレルブランドとの協業を図りつつ、生分解性かつ燃やしてもCO2を増やさないカーボンニュートラルのPlaX Fiberを用いた新商品のリリースを続々と計画している。まだなじみの薄いポリ乳酸だが、一般に浸透する未来はそう遠くはないのかもしれない。
河端 麻紀
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