使用済み紙おむつのごみは、リサイクルできる!循環的な取り組みの紹介

オムツ リサイクル

子育てや介護をしていると、毎日たくさん出る使用済みの紙おむつのごみ。毎日数回、多い日だと10回近く交換するため、かなりの量が出されることになります。紙おむつのごみの多くは、捨てられた後、燃えるごみとして処理されています。そんな中、紙おむつのごみ問題に注目し、リサイクル事業に積極的に取り組む自治体や企業がでてきています。今回は紙おむつのごみをリサイクルしている自治体や企業について紹介します。

使用済み紙おむつのごみの量は増加

使用済み紙おむつ ごみ

高齢化や紙おむつの性能が上がったことにより、紙おむつの使用量は年々増えています。2018年の生産数量は、乳幼児用では2010年の1.7倍、大人用では1.5倍となっています。現在、使用済み紙おむつは、多くの自治体で燃えるごみとして捨てられ、ごみ焼却施設で燃やされています。しかし使用済み紙おむつは、水分を多く含んでいるため燃えにくく、燃料が多く必要になります。また、焼却すると、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が発生してしまうため、紙おむつのごみ問題は環境的に大きな課題があります。

そんな中、環境省は2020年3月に、取組事例や関連技術などを紹介した「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」を策定し、自治体が、殺菌等の衛生的処理をした上でパルプ等の再生利用や熱回収を行うことを検討するための参考にしてもらえるようにしています。

【参照サイト】環境省紙おむつリサイクル関連

使用済み紙おむつの回収をおこなっている自治体

今回は、ガイドラインでも紹介されている、使用済み紙おむつを回収しリサイクルなどを積極的におこなっている自治体を3つ紹介します。
使用済紙おむつ回収 自治体

福岡県 大木町

福岡県大木町では、2011年より全国初となる家庭ごみの使用済紙おむつのリサイクルを開始。町内に専用回収ボックスを59カ所配置し、年間約100トンを回収しています(2018年実績)。2008年に「もったいない宣言(ゼロウエイスト宣言)」を公表し、紙おむつのリサイクル以外にも積極的にごみを減らす取り組みをおこなっています。
【公式サイト】福岡県大木町

鹿児島県 志布志市

鹿児島県志布志市(しぶしし)では、2016年より一部地区にて家庭ごみの使用済紙おむつの分別収集を開始し、現在は71の自治会で回収をしています。また、ユニ・チャームと連携し、使用済み紙おむつ再資源化に向けた取り組みもおこなっています。そのほかにも27品目の分別収集とリサイクルを実施しており、一般廃棄物のリサイクル率では全国4位と高い実績です。
【公式サイト】鹿児島県志布志市

鳥取県 伯耆町

鳥取県伯耆町(ほうきちょう)では、2010年より使用済み紙おむつをペレット燃料化の取り組みを開始しました。2014年より町営温泉施設に専用ボイラーを設置、2016年からは安定した稼働となっています。紙おむつのごみを通して、エネルギーの地産地消による資源循環が実現しました。
【公式サイト】鳥取県伯耆町

紙おむつのごみ問題に取り組む企業

昨今では自治体だけではなく、使用済みの紙おむつのごみ問題に積極的に取り組んでいる企業も増えてきています。その中から今回は4社の取り組みを紹介します。
オムツ リサイクル

ユニ・チャーム株式会社

ユニ・チャームは世界で初めて使用済み紙おむつからパルプを再生する再資源化に成功しました。2016年には先ほど紹介した鹿児島県志布志市と共同で、使用済み紙おむつの最適な収集方法とそのリサイクル技術の構築を目指し、廃棄量の低減に貢献しました。2020年には、東京都で使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業のモデル事業者にも採用され、今年2022年には再生紙おむつが発売予定です。
【公式サイト】ユニ・チャーム

花王株式会社

花王と京都大学は、「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の確立に向けた実証実験に共同で取り組んでいます。2021年に愛媛県西条市の保育施設に、開発した炭素化装置を設置し開発を進め、2023年までに炭素素材への変換技術を確立、2025年以降にリサイクルシステムとして炭素化装置の設置拠点・回収方法などのインフラの検討を予定しています。
【公式サイト】Kao 花王株式会社

大王製紙株式会社

大王製紙は株式会社リブドゥコーポレーションと、使用済み紙おむつから構成部材のパルプ、ポリマー(高分子吸収体)、プラスチックを分離・回収し、それらを資源として再利用するための共同研究に取り組んでいます。この研究では、年間6,000トンの使用済み紙おむつの再生利用と、年間約1,940トンのCO2排出量の削減を目指しています。
【公式サイト】大王製紙株式会社

凸版印刷株式会社

凸版印刷は、住友重機械エンバイロメント株式会社、トータルケア・システム株式会社と3社で、使用済紙おむつをパルプやプラスチックなどの再生資源として再利用する「完結型マテリアルリサイクルシステム」の事業に向けた検討をおこなっています。2021年より東京都八王子市と町田市において一般家庭から出る紙おむつの回収と、再生された製品の再利用までの事業性を検証しています。
【公式サイト】凸版印刷

使用済み紙おむつに関する海外の取り組み

海外でも使用済み紙おむつのごみ問題は注目されており、解決のために企業がさまざまな取り組みを行っています。今回は4カ国、4社の取り組みを紹介します。
オムツ リサイクル

イタリア Fater

衛生用品等の製造を行うイタリアの企業Faterでは、使用済み紙おむつの燃料化とカスケードリサイクル(品質の低下を伴うリサイクル)を行っています。主に工業用プラスチックペレットや、ペット用シートの原材料、園芸用材などの原料として再利用します。

オランダ ARN&EBI

オランダのエネルギー企業ARNと廃棄物管理コンサルタントElsinga Beleidsplanning & Innovatie(EBI)は、使用済みおむつをリサイクルできる工場を建設しました。使用済み紙おむつからプラスチックを抽出し、庭園家具や植木鉢などの家庭用品として再利用します。
【公式サイト】ARN&EBI(英語)

イギリス NappiCycle

イギリスの西ウェールズでは、使用済みおむつを再利用し2.5kmの高速道路が作られました。おむつリサイクル会社のNappiCycleにより、使用済みのおむつを細断し作られたペレットが、アスファルトに加えられ舗装されています。
【公式サイト】NappiCycle(英語)
【関連サイト】使用済みおむつを再利用した2.5kmの道路、英ウェールズに完成

ドイツ DYCLE

ベルリン生まれの土に還るおむつDYCLEは、おむつのすべてが生分解性の素材で作られています。おむつ回収システムや、おむつの廃棄物より土をつくり、植物などを育てることで、持続可能なアプローチをしたい人たちの支援をおこなっています。
【公式サイト】DYCLE(英語)

さいごに

使用済み紙おむつのリサイクルは、まだまだ取り組みがはじまったばかりです。高齢化社会の日本では、今後ますます紙おむつの利用が増えることが予想されており、回収しリサイクルする流れの拡大が求められています。今住んでいる自治体にリサイクル事業の取り組みがあるか、またどのような取り組みをされているかなどを調べてみるところからはじめてみましょう。環境について考え直すきっかけになるかもしれません。

【参照サイト】大崎町、14度目の日本一 自治体別ごみリサイクル率 志布志市は4位 20年度・鹿児島
【参照サイト】 図解でわかるユニ・チャーム紙おむつリサイクル
【参照サイト】東京都公募「使用済み紙おむつリサイクル事業」にユニ・チャームとの共同事業が採択「WOOMS」の廃棄物収集ノウハウを活用した実証収集スタート
【参照サイト】花王と京都大学の「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」実証実験の進捗について
【参照サイト】大王製紙とリブドゥコーポレーション、使用済み紙おむつのリサイクル事業に関する共同研究を開始
【参照サイト】凸版印刷、東京都において使用済み紙おむつリサイクル事業の実証実験を開始

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中池 梓

現在は子育てに奮闘しながら、頑張り過ぎずエコで優しい生活を目標に田舎暮らし。最近の趣味は、小説の深読み(植物が登場する作品に限る)。参考文献などを読みあさり自己流に作品を分析してマニアックに楽しむことにはまっている。