大量生産・大量消費・大量廃棄の問題をさまざまなかたちで解決しようとしているアパレル業界。古着回収やリサイクル、アップサイクルなど、服の循環に取り組む企業もありますが、そうした取り組みの実施が難しい中小企業も少なくないという側面もあります。
そんななか、東京・中目黒に本社を置く株式会社PMCは、2022年12月12日からデニムやシャツなどの洋服からTシャツやエコバッグなどのアイテムまでのアパレル製品をカスタムオーダーできる、ワンストップアパレルファクトリーをオープンしました。小ロットから生産が可能な工場として、大量生産・大量廃棄の課題解決につなげていくとのことです。
また、服を買う側に対しては、自分だけのオリジナルの服をつくることで、特別な1着として愛着を感じて長く付き合ってもらいたいとのこと。服の買い替えサイクルを少しでも伸ばすことで、大量生産・消費・廃棄のながれを変えたいという思いがあるそうです。
こうした、デザインオフィス、縫製工場、プリント工場、ギャラリー、ショールームが一体となったアパレルファクトリーでの取り組みは、都内では非常に珍しい存在です。今回はそのワンストップ・アパレルファクトリーのオープンに合わせて行われた内覧会を取材しました。
大量生産に拍車をかけたコロナ禍で気付いた自社工場の重要性
株式会社PMCは「MEAN(ミーン)」をはじめとする5つの自社ファッションブランドを展開するほか、外部ブランドのデザインやビジュアル、店舗ディレクションなども手掛けています。
同社の代表取締役であり、クリエイティブディレクターの丹羽俊介さんによると、海外ではアパレル業界におけるサステナビリティはもはや当たり前のこととして取り組まれている状況を感じていたそうです。「日本ではまだまだ改善の余地があるなかで、自分たちには何ができるのかを考えた」と、今回のファクトリーのオープン経緯を語りました。
また、コロナ禍や社会情勢の変化から、中国などの工場に生産の依頼をしようと思っても、大ロットでしか受け入れてくれなくなってきている背景も「自社で工場機能を持つ重要性を実感したことも、今回のファクトリーをオープンしたきっかけになりました」と、丹羽さんは言います。
企業向けには無駄な大量生産の抑制に、消費者向けには洋服への愛着形成に
今回オープンしたのは、1階の熟練の職人によるシルクスクリーンプリントをメインにしたプリント工場と、それに隣接するかたちでポップアップショップやイベントなど自由な使い方ができるギャラリーです。そして2階にはデニムも縫える縫製工場、10階にはデザインオフィスが入ったファクトリーが誕生しました。こうした工場やオフィスが一体型となったことで、企業にも消費者にもサービスを提供しやすいシステムになりました。
企業向けには製品の企画やデザイン、サンプル作成、小ロットの生産はもちろん、製品販売にあたってのブランディングから撮影、ビジュアル制作、店舗のデザインまで、ブランドに必要なすべてを提供。消費者向けには個々に応じた採寸や型紙を起こして服作りを行う「ビスポークジーンズ」をメインに、色や形や素材を自由に選んで作れるオリジナルTシャツやエコバッグなどを展開します。
企業にとっては、小ロット生産を経た後に本格稼働が決まり、大ロットの大量生産に踏み切ることで、売れ行きがわからない状態での大量生産を避けることが可能になります。結果として、過剰生産による売れ残り=衣料の廃棄を減らすことできるので、ファッションの大量生産・大量廃棄の削減につながります。
服を買う側は、カスタムオーダーすることでお気に入りの1着を製作できます。自分だけのオリジナルなので「長く大切に着続けたい」という愛着が生まれやすくなり、結果として1着の服の寿命を伸ばすことができます。服を買っては捨てるといった、消費行動ではない洋服の選び方をしてもらうことが狙いだそうです。
目の前で自分の選んだ洋服を作ってもらえるうれしさ
実際に筆者も1階にあるプリント工場にて、カスタムオーダーを体験してみました。
まずは壁にラインナップされているTシャツやトレーナーなどから自分の好きな型と色、そしてデザインを選んでいきます。自社ブランドも展開している同社ならではの、ブランドロゴから選ぶことも可能です。筆者はグレーのトレーナーで白地の模様を選択。
選んだ後はシルクスクリーンの機械で顔料を使って、職人さんがプリントをしてくれます。自分が着る洋服のために、丁寧に丁寧にプリントしてくれる姿を見るだけで心が温かくなり、出来上がりにとてもワクワクします。
プリントが終わったら赤外線の機械に通して最終工程。2分ほど赤外線に当てたら、いよいよトレーナーの完成です!素材選びから15分ほどで完成したスピーディーさもすごい。
こちらができあがったトレーナー。自分で選んだ色とデザインだから、すごく気に入りました。着てみると、お店で既製品を買ったときとは比べ物にならないくらいのうれしさ。目の前で作ってもらえるというのも貴重な体験で、この1着に愛情がわいています。洗濯のときや畳むときなども、他の洋服より丁寧に扱うようになりました。
2階の縫製工場ではデニムやコートも作ってもらえる
また、2階にある縫製工場では目の前でデニムやコートなどの素材と、縫製の糸やステッチなどを選んで、カスタムオーダーで洋服を作ってくれます。
オーガニックコットンを使ったデニムなども提案してもらえるので、自分好みのデニムに出会えるはず。デニムスペシャリストの矢野義明さんが、どのようなシーンで着るのかといったシチュエーションから相談にのってくれるのも心強いです。
工場には都内でも珍しい巻き縫いミシンやインターロックミシンなど、特殊なミシンもズラリ。デニムならではの縮みや味、強度を出すためには欠かせないミシンたちで、長くずっと着られる洋服作りのために取り揃えているそうです。こちらの縫製工場によるカスタムオーダーは受注後、約2週間で完成します。
中目黒という東京の中でもアパレルの中心地である立地に、こうしたアパレルファクトリーがオープンしたのは、とても大きな出来事だと感じました。カスタムオーダーによって大切な1着と出会える機会が増えることで、多くの人の洋服に対する捉え方が変わるはず。みなさんも中目黒にお買い物に行ったついでに好きな服を作れるPMCのアパレルファクトリーに、足を運んでみてはいかがでしょうか。
【参照サイト】株式会社PMC
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