漆をもっと身近に。能登ヒバと天然漆から作られた「漆のお箸 十八膳」

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18種類のスタイリッシュな漆塗りの箸からなる「漆のお箸 十八膳」。塗りや絵付けといった「十八番(おはこ=もっとも得意な技)」とする技術を生かしながら、伝統にとらわれないデザインにすることで、漆になじみのない若い世代にも手に取りやすいお箸を生み出しています。

「十八膳」ブランドの母体である株式会社橋本幸作漆器店は、1950年に石川県輪島市で創業し、70年以上、箸だけを作り続けてきた会社です。輪島塗の職人であった初代の橋本幸作さんが生み出した箸づくりと絵付けの技術が、代々受け継がれてきました。

今回は、「漆のお箸 十八膳」ブランドの母体、株式会社橋本幸作漆器店の代表の橋本きよ乃さんと、家業4代目で漆のお箸 十八膳」ブランドの立ち上げ・監修に携わる、娘の橋本夏希さんにお話を伺いました。

漆を次の世代に受け継いでいく使命

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「展示会に出展すると、漆は見たことも触れたこともない、という方がたくさんいらっしゃいます。『十八膳』の箸が、漆に触れる最初のきっかけになるといいなと思います。漆は何千年も前から使われてきた『唯一の天然塗料』ですから」ときよ乃さんは話します。きよ乃さんと娘の夏希さんの使命は、若い世代に漆の素晴らしさを伝え、次の世代に残していくことです。

かつては人気の高かった漆塗りの箸。デパートや専門店で販売され、多くの漆器ファンが買い求めました。しかし近年では、若者が漆塗りの箸の売り場に足を運ぶことはほとんどありません。そんな現代の若い消費者にも、もっと気軽に漆を感じてもらいたい。そんな思いで、「漆のお箸 十八膳」は立ち上げられました。

漆塗りは日本に古くから伝わる、環境に優しい技術であると言われています。原料は、木、漆、土などの天然成分だけ。漆器は耐久性に優れ、使い込むほどに自然なツヤが出てきます。傷やヒビは金継ぎで直すことができますし、漆がはがれてしまったら塗り直すこともできます。

「輪島塗」などの伝統工芸品の多くは高価なうえ、多くの人が「うるし」は肌がかぶれる、手入れが難しいというイメージを抱いているのではないかときよ乃さんは言います。「『うるし』に対してなんとなくネガティブなイメージを持っている方も多いようですが、漆はもっと暮らしの道具として気軽に使えるものです。日常の何気ないシーンでも漆が使えることを、もっと多くの人に知ってもらいたいです」と話します。

親しみやすくジェンダーレスで多様なデザイン

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「漆のお箸 十八膳」の最初の課題は、これまでの箸からの差別化でした。夏希さんは「若い世代を中心に、人の目を引き、漆の印象を変えてもらうために、あえてスタイリッシュなデザインにしました。漆で表現できるもの、人を驚かせるものをもっと見せたい。漆の新たな一面を発見していただけると嬉しいです」と話します。

一般的に、漆は黒か赤のイメージがあります。しかし、「漆のお箸 十八膳」には、青や緑といったカラフルな色が使われています。また、これまでの漆器とは異なる、木目調の自然な風合いも特徴です。「現代のセレクトショップや雑貨店の雰囲気に合うデザインにすることを目指しました」と、夏希さんは言います。実際にお客さんからは、「かわいい」といった言葉を多く寄せられるそうです。お祝いなどで、人に贈ることの多い漆のお箸。「こんなかわいいお箸を、贈ったら喜ばれそう」といった声が、夏希さんの励みになりました。

一般的な漆塗りの箸と比べてリーズナブルな価格設定には理由があります。「通常、漆塗りは何層にも塗る必要があり、この工程によってコストが高くなります。しかし、『漆のお箸 十八膳』は木目をあえて出すデザイン。そのため重ねる層が少なく、コストを抑えることができるのです」。こうした工夫で、漆になじみのない消費者にとっても買い求めやすい価格にできました。

また、「漆のお箸 十八膳」のお箸はジェンダーレスです。多くの箸はサイズが2種類あり、小さい方は女性用、大きい方は男性用となっているのが一般的。また、色も女性用には赤などの華やかな色を、男性用には黒系の落ち着いた色が使われている場合が多いです。しかし、十八膳の箸はすべて同じ長さ。色も、特定の性別を対象に固定していません。「男性が赤いものを使ってもいいし、女性が黒いものを使ってもいい。スタイルや気分に合わせて選んでいただきたいと思います」と、きよ乃さんは言います。

先人たちから引き継いだ、人と環境にやさしいモノづくりを未来に

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橋本幸作漆器店は創業以来、輪島の地元の木、能登ヒバを使って箸を作り続けてきました。ヒバはスギやヒノキと同様に、日本で古くから建材として使われている木材。耐久性や耐朽性、水湿性に優れているため、神社仏閣の土台として使われることも多い木です。箸作りにこうした地元の木材を使うことで、次の木が育ち、先人たちが残してくれた森を守ることができます。また能登ヒバから作られた箸はとても軽く、自然素材ならではの優しい使い心地を味わえます。

漆には「癒される塗料」の別名があり、使っていて気持ち良い質感が手から伝わります。「漆のお箸 十八膳」の箸を使って食事をすることで、癒しを感じられるはずです。

橋本幸作漆器店は、体にやさしいものづくりにこだわり続けてきました。「化学塗料は一切使っていません」ときよ乃さん。実際に、橋本幸作漆器の製品は人と環境に優しい天然成分で作られています。きよ乃さんと夏希さんは、先人たちと同じように、そうした製品を作り続けたいと考えています。「多くの方々に漆を体験していただいて、その子どもたちにも受け継がれていくことを願っています」

編集後記

取材を通し、「漆のお箸 十八膳」のお箸には、多くの情熱と努力が注ぎ込まれていることが伝わってきました。きよ乃さんと夏希さんのお話から、箸は単なる道具ではなく、大切な人と一緒の時間を過ごしながら、食事をするために使われ、体と心の両方に幸せをもたらすものなのだと感じました。だからこそ人や環境にやさしい原料、製造であって欲しい。

日々の暮らしで使う道具が、これから先もずっとサステナブルであるように。「漆のお箸 十八膳」のものづくりは、昔から身近な存在の箸を、伝統的な技法を使って今の社会や環境に合う形にすることで、過去から現在、そして未来へと引き継がれていくのではないでしょうか。原材料や製造方法、デザインに至るまで、私たちに「本当に安全でエシカルか?」という疑問を投げかけてくれる「漆のお箸 十八膳」のような製品から、エシカルな生産と消費のあり方について学べることがたくさんあるはずです。

今回ご紹介した「漆のお箸 十八膳」の商品を実際にご覧になれます!

Life Huggerでは、日本のソーシャルグッドな情報を世界に発信しているZenbirdと共に、2022年9月9日(金)に渋谷のTRUNK HOTELで開催予定のイベント「MoFF2022」にて、キュレーション展示「100年先へ作り手の想い伝える」を行います。この展示において、漆のお箸 十八膳をご紹介いたします。実際に手にとってご覧になりたい方は、ぜひMoFF2022にお越しください。

MoFF2022について、詳しくはこちらをご覧ください。

日本のソーシャルグッドを世界に伝える「Zenbird」とは?

Zenbirdは、日本中のソーシャルグッドなアイデアや取り組みを英語で配信しているウェブメディアです。社会課題の解決に挑むスタートアップや地方創生などのNPOの事業、日本文化に根付いているサステナブルなライフスタイルの知恵などを海外に発信しています。

Zenbirdの「Zen」は「善」(社会にとってよいこと)を意味しています。日本中の「善」が、「Bird」(鳥)のように世界へと羽ばたき、世界中の人々が日本の魅力を発見するきっかけを作りたい。Zenbirdという名前には、そんな想いが込められています。

【参照サイト】漆のお箸 十八膳
【関連ページ】Ethical lacquered chopsticks to preserve traditions among modern Japanese|Zenbird

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Life Hugger 編集部

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