もうすぐ夏休みが始まり、自由研究に悩む保護者も増えてくる時期。最近では小学校の授業でもSDGsについて詳しく教えていることから、今年の自由研究はSDGsに関連するトピックに挑戦してみるのはいかがでしょうか。SDGsと聞くと難しく感じてしまいますが、光熱費の削減やゼロウェイストにチャレンジなど、親子で気軽に取り組めるものもいろいろあります。
そこで今回は、7月6日に行われた東京ガス主宰のオンラインセミナーから省エネをテーマにした自由研究や具体的な進め方についてご紹介します。
夏休みの自由研究はSDGsへの興味関心を広げるチャンス
オンラインセミナーに登壇したのは、東京ガス株式会社 都市生活研究所 統括研究員の三神彩子さん。三神さんは環境省の実証事業に参画し、小学校~高校向けの指導者用テキスト「今日からはじめる省エネ教育」(開隆堂出版)を執筆しています。
今回、三神さんに教わったのは、SDGsの全17目標のうち13の「気候変動に具体的な対策を」をメインに据えた自由研究。この目標はすべてのSGDsのもとになっているとも言える項目なので、子どもがSDGsに最初に向き合う上では最適な内容です。一方で、気候変動と聞くと「問題が大きすぎて自分が何をしたらわからない」と感じる人も多いでしょう。
今回はおうちの中という身近な環境の中でできる研究なので、子どもたちにとって取り組みやすい内容になっています。自由研究は、国語や算数といった必須科目とは異なり、物事への探求心や生きていく力を育てるチャンスともなる勉強です。やり遂げることで自己効力感を高めることができるので、研究することで達成感があり、自分の中で腑に落ちるような研究テーマに取り組むことがおすすめなんだそうです。
そうしたことを踏まえ、三神さんから家族で取り組めて省エネになり、さらに節約ができて家事も上達する2つの自由研究の方法を紹介してもらいました。
おすすめSDGs自由研究1「省エネ行動」
まずは「省エネ行動」に関する自由研究。これは、行動を変えながら1週間ごとに家のガスや電気のメーターを確認することで、自分の行動がどのように省エネに繋がるかを知って考察を深めるというもの。それでは研究の進め方を見ていきましょう。
①電気、ガス、水道のメーターを探す
まずは電気、ガス、水道のメーターを探すところから始めます。一戸建てであれば、家の周りをぐるりと1周してみましょう。電気メーターとガスメーターは、玄関横や玄関の内側に設置されている場合があります。水道メーターは道路に近い地面に取り付けられていることも。
マンションやアパートであれば、メーターボックスや建物の入り口付近にまとめて設置されている場合も多いでしょう。宝探しゲームのように、親子で一緒にメーターを探してみるのも楽しそうですね。
②電気、ガス、水道のメーターの数値を読み取って記入
メーターを見つけたら1回目の数値を読み取ります。読み取る際には、小数点以下まで読み取りましょう。なお電気は機械式メーターであれば数値はそのままで大丈夫ですが、スマートメーター式だと10秒ごとに数字が変わります。その際はかならず大きな方の数値を読み取ることがポイントです。
③1週間目はいつも通りの生活をする
省エネ行動を自由研究で行う際には、「どういった生活によって省エネができたのか」という違いを比較して検証します。そのため、メーターを最初に見つけた日から1週間はいつも通りの生活を送り、最後の日に2回目の数値を記録していきましょう。
④2週間目、3週間目は省エネ行動にチャレンジ
いつも通りの生活で1週間を過ごしたら、次の1週間は各機器の設定を変更し、次の1週間は毎日の省エネ行動にチャレンジしてみます。いずれも子どもでも簡単に取り組めますよ。
【ステップ1】おうちにある各機器の設定を見直す
まずはキッチン周辺で使っていない家電の電源プラグを抜きます。特に炊飯器や電子レンジ、トースターなどは、使っていない間も電源プラグを挿したままにしいることが多い家電です。冷蔵庫は電源プラグを抜くことはできませんが、設定を中や弱にしてみます。冷蔵庫だけでなく、冷凍庫やチルド室も個別に設定していきます。
同じくキッチンでは給湯温度設定を一番低い温度に変更。機器によって32℃~37℃とバラつきがありますが、下げられるところまで下げていきます。お風呂でも、湯船とシャワーの設定を39℃~40℃へと下げていきましょう。
洗濯機に関しては、エコ/節水モードに変更。このモードがない洗濯機を使っている場合には、洗濯時間を短く、すすぎ回数も2回から1回へと変更します。
テレビの設定もリモコンで省エネモードを選択しましょう。省エネモードがない場合には、明るさの設定を暗くしてみます。エアコンを使っている部屋では設定温度を28℃に変更。冷房を使うときにはカーテンやドアを閉めるとより効果的になるので意識していくといいですね。
各機器の設定を変更してから1週間を過ごし、最後の日に3回目の数値を読み取って記録していきましょう。いつも通りの1週間を過ごした2回目の計測値から、この3回目の計測値を引いた数値が、設定変更によって変化した結果の電気、ガス、水道の量になります。
【ステップ2】毎日の省エネ行動を意識する
次の1週間は、おうちで過ごす時間でできる省エネ行動を実践します。まずは使っていない場所の照明を積極的に消したり、明るさを一段下げたりと調節。テレビは見ていない時は消し、見たい番組があるときだけつけましょう。
トイレでは流す際に「大」と「小」のレバーを使い分けます。毎日の習慣で、なんとなくいつも「大」で流してしまう人もいるかもしれませんが、使い分けを意識してみましょう。またトイレのふたをしたり暑い日は便座の暖房を切ったりするのも省エネにつながります。
お風呂ではシャワーを使う時間は5分以内を目指し、浴槽のふたをこまめに閉めます。キッチンでもお湯は必要な量だけ沸かしたり鍋にふたをしたりすればガスの省エネに。
⑤1週間ごとの数値をグラフにして考察する
1週間省エネ行動に取り組んだら、最後の日に4回目となる各メーターの数値を記録しましょう。このように1週間ごとにメーターの数値の記録と省エネ行動を実践したら、結果を棒グラフなどにして考察していきます。毎週、数値の計測が楽しみになるだけでなく、省エネにつながる行動の分析をすることで探求心も生まれるはずです。
また省エネは月の光熱費にも直結するので、たとえば去年の夏休み期間の光熱費の金額と比較するのも面白いかもしれません。家族に協力してもらいながら、毎日省エネを実践し、結果を計測をしてみると、SDGsのためにひとりひとりができる行動を把握しやすくなるでしょう。
機器の設定や省エネ行動は、すべてをやらなければならないわけではなく、各家庭によってできることに取り組めばOK。家族と相談して「こんな省エネ行動もやってみよう」と、自分なりの行動を付け加えてもよさそうです。
なお、各メーターの数値の変化をわかりやすくして比較することが大事になってくるので、メーターの読み取りは毎週同じ曜日、同じ時間に記録することがポイントです。
おすすめSDGs自由研究2「エコ・クッキング」
次に紹介する自由研究は「エコ・クッキング」です。「エコ・クッキング」とは、環境のことを考えながら、買い物、調理、食事、片づけまで行うこと。ポイントは「エネルギーを大切にして上手に使うこと」「食べ物を大切にしてゴミを減らすこと」「水を汚さずに大切に使うこと」、そして「楽しく作っておいしく食べること」です。実際に自分で作った料理を食べるので、子どもにとっても満足度が高い自由研究になります。それでは、エコ・クッキングで押さえるべき、調理の7か条を見ていきましょう。
エコ・クッキング調理の7か条
その1:野菜はため水+流水で洗う
野菜を洗う際にはボウルなどに水をためておき、ためた水で洗っていきます。汚れや泥の少ない順で洗えば、水をその都度交換することも少なくなります。ため水だけでは洗い切れないので、最後に流水でさっとすすぐと衛生的にも安心です。
その2:野菜の次に肉や魚を切る
食材を切っていくときに、食材ごとにまな板を洗うと水がもったいないですよね。そのため、野菜を切ったらそのまま同じまな板で肉や魚を切ると、まな板を洗う回数を減らすことができます。
その3:野菜は丸ごと皮ごと使う
たまねぎであれば皮と根元をうすく切り取り、にんじんであれば根本を切り取って可食部を残します。へたの周りも細かく切って使いましょう。できるだけゴミを減らすことを意識します
その4:火加減を調節する
ガスコンロの場合、強火にしても鍋から火がはみだしてしまったらその分のエネルギーが無駄になってしまいます。フライパンのように鍋底の大きなものを使うと、無駄なく熱を使えるので火を上手に使うことができます。
その5:鍋にはふたをする
加熱中はふたをしておくことも大事なポイント。熱を鍋の中に閉じ込めて、加熱効率をよくしていきましょう。
その6:洗う前に油汚れを拭き取る
鍋や食器を洗う際には、洗う前に一工夫。汚れや油を古布で拭き取ってから洗うと、使う洗剤と水を少なくすることができます。
その7:水をこまめに止める
面倒でも水道を出しっぱなしにするのではなく、こまめに止めることを意識します。
いつも通りの料理とエコ・クッキングを比較してみる
エコ・クッキングはチャレンジして終わりではなく、エコ・クッキングによってどのくらい食べ物のゴミや使う水の量が減ったのかといった変化を比べてみることも大事になってきます。
たとえばカレーを作る際、1回目はいつも通りの調理方法で作り、2回目はエコ・クッキングで作ってみて、どのくらいゴミが減ったのかを量り、グラムで比較してみましょう。
また、食器洗いをするときも、いつも通りに洗った場合とエコな方法で洗った場合とで、使った水の量を比べることができます。
水の量を比べる方法としては、ボウルを洗いおけにし、じょうろ口を取り付けたペットボトルから水を出してもらった上で、いつも通りとエコな方法で、同じように汚れた食器を1枚ずつ洗ってみましょう。洗い終わった時に、ペットボトルにどのくらい水が残っているかで水の使用量を比べることができます。
自由研究ではゴミや水の量の違いを比較するだけでなく、いろいろなエコ・クッキングにチャレンジしてみて、自分なりのエコ・クッキングレシピ集を作ってみるのもおすすめです。
まとめ
今回ご紹介した「省エネ行動」と「エコ・クッキング」の2つの自由研究は、子どもにとって身近なことからSDGsの知見を広げたり自己効力感を高めたりします。また、家族にとっては家計の節約につながります。
いずれも親子で協力しながら楽しく取り組めるので、夏休みのおうち時間をワクワクした気持ちで過ごせそうです。子どもの自由研究テーマに悩んでいるという方は、身近な省エネ行動やエコ・クッキングに挑戦してみるのはいかがでしょうか。
【参照サイト】東京ガス 都市生活研究所
【参照サイト】小学生の自由研究に! 親子で「SDGs」~楽しみながら省エネに~
【参照サイト】省エネ行動 ワークシートダウンロード
【参照サイト】小学生の自由研究に! 親子で楽しみながらエコ・クッキング
【参照サイト】エコクッキング チャレンジシートダウンロード
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