【インタビュー】フィリピン人による家事代行サービスの魅力とは? パソナ「クラシニティ」担当者が語る

※2017年12月時点の情報に基づくインタビュー記事となります。最新情報についてはHPをご確認ください。

現在政府は女性の活躍推進に向けて女性の家事負担を減らすための家事代行サービス普及に力を入れており、その一環として2015年の改正国家戦略特区法により「家事支援外国人受入事業」を開始しました。これにより、国家戦略特区の中で認定を受けた東京都、神奈川県、大阪市の3地域では外国人による家事代行サービスの提供が解禁され、同事業を通じて新たに日本にやってきたフィリピン人のスタッフが、徐々に家事代行サービスの現場で活躍し始めています。

家事代行サービスの利用を検討されている方の中には、「フィリピン人の家事代行スタッフは実際のところどうなのか?」「しっかりと仕事をしてくれるのだろうか?」「見知らぬ外国人が自宅に来ても大丈夫なのか?」など、このフィリピン人による家事代行サービスが気になっている方も多いのではないかと思います。

そこで、今回カジフル(現・Life Hugger)編集部では「家事支援外国人受入事業」認定を受けた6事業者のうちの一社、株式会社パソナでフィリピン人による家事代行サービス「クラシニティ」を担当している澤藤真紀子さんにその魅力や現状についてお話をお伺いしてきました!

クラシニティのサービス内容

Q:クラシニティについて簡単に教えてください。

パソナは、女性の社会進出を支援するため、フィリピン国籍の専門スタッフによる神奈川県及び東京都(国家戦略特区)で提供するハウスキーピングサービス「クラシニティ」を行っています。クラシニティには「ハウスキーピング」を一部の富裕層だけではなく誰もが一般的に利用できるサービスにしたいという願いがあるため、あえて1回2時間5,000円、初回お試しプランは2時間3,000円というリーズナブルな価格に設定しています。こちらにはスタッフの交通費や不在時サービスの鍵保管料なども全て含まれています。

Q:人材企業のパソナが家事代行サービスを始めた理由は?

パソナグループは1976年に「女性の再就職を応援したい」という想いから創業し、以来、人材派遣や教育研修、企業内保育所の運営など、様々な事業を通じて女性の就労とキャリア形成を支援してきました。「働く女性を応援したい」という理念のもと、クラシニティもその一環として立ち上げたサービスとなります。

Q:どのプランが人気ですか?

月4回プラン(週1回)が一番人気ですね。利用方法としては在宅が3割、不在時の利用が7割といったイメージです。最初は在宅で依頼するものの、慣れてくると鍵を預けて、不在時にサービスを利用するという方が多いですね。

Q:どんなスタッフが働いていますか?

スタッフ全員がフィリピン国内でハウスキーピングの国家資格を取得しており、かつ400時間以上の研修を受けています。当社ではフィリピン現地の人材サービス会社であるマグサイサイグローバルサービス社と提携し、オリジナルのカリキュラムで研修を行っています。研修では掃除スキルだけではなく日本語や身だしなみ、挨拶など日本で働くマインドセットも含めてプロのハウスキーパーとして活躍するための教育を行っています。

また、当社ではスタッフを直接雇用の社員として採用しているため、採用自体も書類選考に加えてスキルテストや英語力、仕事への姿勢や目標など様々な基準を設けています。一般家庭でサービスを提供するということもあり、2か月半の研修期間中でも態度やパフォーマンスが基準に満たない場合には最終試験で採用に至らないこともあります。現状スタッフは30代が多く、25名の来日スタッフが在籍しています。

Q:フィリピンにはハウスキーピングの国家資格があるのですね。

フィリピンは家政婦の輩出歴が40年以上あり、ハウスキーピングに関する研修機関が数多くあります。それらの機関で研修を受けることで国家資格がとれるのですが、クラシニティのスタッフの場合は、その資格を持ちつつさらに中東や香港、台湾、シンガポールなどで家政婦として活躍した経験を持つスタッフが中心となっています。ハウスキーピングのやり方は国によっても異なるため、400時間の研修には彼女たちの経験を平準化するという意味合いもあります。

Q:サービス利用者はどんな方が多いですか?

幅広いお客様にご利用いただいていますが、一番多いのは30代、40代の共働き世代のお客様ですね。また、最近では20~30代の単身男性のお客様も多くなってきています。クラシニティでは掃除だけではなく洗濯や洋服のアイロンがけ等も対応できますので、家事が苦手だという単身男性の方がよくご利用されています。外国籍のお客様や、海外への駐在経験がありハウスキーピングサービスの活用に慣れている日本人の方もいますが、家事代行サービスを依頼するのが初めてという日本人のご家庭も多いですね。

株式会社パソナ 営業総本部クラシニティ部 副部長 澤藤 真紀子 氏

フィリピン人による家事代行の魅力とは?

Q:利用者の方がクラシニティを選ぶ理由は?

フィリピン人スタッフのクオリティ、コストパフォーマンスが理由の1つかと思います。あとは鍵を預けるということもあり、大手会社が運営しているという安心感もあると思います。

クオリティについては、「フィリピン・ホスピタリティ」という言葉があるように彼女たちのホスピタリティ精神の高さは素晴らしく、掃除もとても上手でピカピカになるので、サービスの「質」には皆さん大変満足頂いています。彼女たちのモチベーションは「いかにお客様が喜んでくださるか」というところにあり、この箇所だけやればいいという考え方をしていません。そのため、家全体を綺麗にするといった依頼のほうが得意ですね。また、水回りの清掃はもちろんですが、特にベッドメイキングについては、お客様からは「高級ホテルに帰ってきたような感じだ」という声を頂きます。シーツの皺がなくなるよう手でアイロンをかけ、枕はふんわりと仕上げます。私にはとても真似できません(笑)。

日本だとハウスピーキングのプロフェッショナルとして活躍する方は多くいませんが、彼女たちはこの仕事が好きで、この仕事をやるために日本に来ているので、お客様の家を綺麗にして喜んでもらうということをやりがいにしています。お客様との心の交流も生まれており、今では家族の一員だと言ってくださるお客様もかなりいます。

あとは、フィリピン人スタッフの場合、プライベートを見られている感じが少なく、割り切ってお願いできるというメリットもありますね。日本人スタッフに家事代行を依頼する場合、お客様の中にはスタッフに「この家庭はこんなこともできていないのか」と思われるのではないかと心配される方もいます。しかし、フィリピン人スタッフの場合はこのような心配なく、ホテルのルームサービスを利用する感覚で依頼いただいています。

Q:スタッフとのコミュニケーションは大丈夫か?

最初のお打ち合わせがとても重要で、当社の営業担当がお客様の要望や優先順位、ノータッチにする部分などをしっかりとヒアリングします。その後のお客様とのやりとりについても基本的には当社のカスタマーサポートが担当し、フィリピン人スタッフへの指示は当社から出す形になっているので、安心してご利用いただけます。

マニラにて家事の実技研修をするフィリピン人スタッフ

フィリピン人スタッフ受け入れの現状

Q:フィリピン人スタッフが日本に来て感じたギャップは?

彼女たちは今まで他の国では住み込みで働いていたので、最大のギャップは公共交通機関を使ってお客様の家にたどり着くという点でした。電車に乗ったこともほとんどなかったので、最初は日本の複雑な電車を使いこなすのは大変だったと思います。しかし、やはり世界各国で働いてきただけあり彼女たちの適応能力は非常に高く、今では住所を伝えただけでアプリなどを駆使しながら一人で現場まで行っています。また、家事作業についてもこれまでの働き方は住み込みだったので自分のペースでやればよかったことを、今は2~3時間の決められた時間内でやらなければいけません。自分の中でしっかりと優先順位をつけて時間内で終わるよう工夫しながら取り組んでいますね。

スタッフの中には日本に来ることが夢だったというものも多く、休みには桜を見たり浴衣を着たりして日本での生活を楽しんでいます。今は月に2回土曜日に日本語の研修を実施し、語学習得にむけても積極的に勉強もしています。

Q:フィリピン人スタッフの受け入れ・フォロー体制は?

スタッフ一人一人へのフォローを非常に丁寧に行っています。例えば入社してから最初のお給料が入るまでの1ヶ月の生活費は当社が負担していますし、彼女たちにはスマートフォンを会社で貸与して、寮に帰宅後は無料wifiでフィリピンにいる家族と自由にコミュニケーションがとれるようにしています。彼女たちは中東などの諸外国ではプライベートの時間はほぼなかったので、その意味で日本は働きやすいと言ってくれています。

Q:3年間という受け入れ期間についてはどう考えるか?

来日したスタッフからは、できるなら長く日本にいたい、という声は上がっています。当社としてはまずは第一陣としてやってきた25名のスタッフによるサービスを安全に稼働させ、お客様に喜んでいただき、事業を成功させることが今の目標です。

Q:期間終了後のフィリピン人スタッフのキャリアは?

当社では彼女たちを単なるワーカーとは考えていません。彼女たちはプロフェッショナルなハウスキーパーであり、この3年間で日本語を習得するなど何らかのスキルを身につければ、自身のキャリアの選択肢も広がります。私たちは彼女たちにキャリアビジョンを持ってもらうことで日々の仕事も向上心高く取り組んでもらえるのではないかと考えており、3年後の彼女たちの人生も応援したいと考えています。

日本語の勉強に取り組むスタッフたち

家事代行サービスを検討中の方へのメッセージ

Q:家事代行サービス選びにおけるポイントは?

きちんとした会社かどうかが一番大事ですね。何かあったときに誠実に迅速に対応してもらえるかどうかは見たほうがよいかなと思います。あとはスタッフの身だしなみがきちんとしているかなども大事ですね。

Q:家事代行サービスを検討されている方にメッセージをお願いします。

クラシニティでは、感動レベルのサービスをお届けすることができると思います。世界各国で経験を積んだプロフェッショナルなハウスキーパーが、世界基準のサービスをお届け致します。ぜひお任せください。

フィリピン人の家事代行スタッフの方々と共に。

インタビュー後記

今回の取材を通じて分かったフィリピン人による家事代行サービスの魅力は、ずばり「クオリティ」「ホスピタリティ」「外国人ならではの頼みやすさ」という3点です。フィリピンの方はとても陽気でホスピタリティに溢れていますし、フィリピンではハウスキーピングの仕事は一般的なので、クオリティが高いという点も想定の範囲内でしたが、日本語が読めないフィリピン人だからこそ、かえってプライベートを見られるといった気恥ずかしさを感じることなく割り切って依頼ができるという3つ目のメリットは新鮮な発見でした。

また、フィリピン人による家事代行サービスは日本にとってもクラシニティのような事業者にとっても初めての試みであり、入国手続きの問題など様々な課題がありますが、そのなかでも受け入れスタッフ一人一人に手厚い研修とフォロー体制を用意し、「家事代行サービスを誰もが利用できる一般的なサービスにすることで、誰もが働きやすい社会を作る」というゴールの実現に向けて何としても成功事例を作りたいという澤藤さんのお話はとても印象的でした。

少子高齢化による労働人口の減少が進む日本では、新たな労働力の担い手として「女性」「シニア」「外国人」の活用が期待されています。その意味で、「外国人の雇用増加」と「女性の働きやすさ向上」を同時に実現する「家事支援外国人受入事業」は、日本の将来を考えるうえで非常に社会的意義の大きい事業だと言えます。現在はまだ戦略特区の一部に限られていますが、ぜひとも広がっていって欲しいサービスだと感じました。

フィリピン人による家事代行サービスについて懸念を持っていた方も、上記のインタビューを通じて少し印象が変わったのではないでしょうか。興味がある方はぜひ一度依頼してみることをおすすめします。きっとホスピタリティ溢れるフィリピン人スタッフに出会えるはずです。

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Life Hugger 編集部

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