【10/1〜】危機を希望に。IDEAS FOR GOODが、読者とともに「新しいメディアのかたち」をつくるクラファンをスタート

クラファン

社会を“もっと”素敵な場所に──そんな想いを胸に2016年に創刊した「IDEAS FOR GOOD」は、まもなく10周年を迎えます。ここまで歩めたのは、記事を読んでくださる皆様、社会課題の最前線で挑戦を続ける実践者の方々、そしてともに記事を紡いできたライターの皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

いま、私たちはメディアとして二つの危機に直面しています。

クラファン

一つ目は、GAFAなど巨大プラットフォーマーによる市場の寡占化や、AIの進展などにより、世界中のデジタルメディアが苦境に立たされている「経済的な危機」です。AIという、いわば一種の「巨大メディア」が登場し、人々はウェブメディアをわざわざ見に行かなくても、プロンプトを入力するだけで世界中のアイデアを瞬時に得られるようになりました。そんな時代に、私たちはメディアとしてどのような価値を提供できるでしょうか。

二つ目は、「環境・社会的な危機」です。デジタルがもたらす環境負荷は気候危機を加速させ、アルゴリズムがつくり出すフィルターバブルは社会の分断を加速させています。人間の美しさも醜さも、鏡のように学習するAI。だからこそ、私たちが何をデジタルに記録・保存(アーカイブ)し、何を学習させないかを意志的に選ぶことが重要です。

私たちはメディアとして何をデジタル上にアーカイブし、AIに学習してもらうべきでしょうか。大量に溢れる情報の中で置き去りにされがちな、気候危機の最前線に立つ人々の眼差し、地域で小さな挑戦を続ける人々の言葉、社会の片隅にある微かな声。こうしたリアルの経験や感情を丁寧にアーカイブすることこそが、AIとともによりよい未来を築くための土台になるはず。

そして反対に、現実世界に渦巻く差別や偏見など、むしろ学習させるべきではない情報も存在するでしょう。それらは歴史の検証のために記録は残しながらも、再生産を防ぐためにAIの学習からは切り離す必要があります。

しかし、危機だと嘆いているだけでは、ほしい未来を実現することはできません。このようなときだからこそ、私たちはこの“危機”を“希望”に変えていきたいと思っています。

本当の意味で人を幸せにするデジタルメディアとは、どのようなかたちをしているのでしょうか?デジタルを介さず、人と人とが直接触れ合う「場(ば)」を現代のメディアとして再発明するとしたら、どのような体験になるでしょうか?もし2050年にAIと人間、人間以外の存在とが楽しく共生している世界が実現できているとしたら、そのとき人々はどんなメディアに触れており、そこにはどんな文字や音が載っていて、どんな人々の声が救い上げられているでしょうか?

私たちがつくりたいのは記事そのものではなく、誰もが希望と安心に包まれて生きられる、よりよい未来。そして私たちがなりたいのは、“危機”をただ映し出すメディアではなく、 “危機”から“希望”への移行を仲介し、導くメディアです。

クラファン

Henri Matisse, La Danse (II), 1910

しかし、それは私たちの力だけで実現することはできません。読者や応援してくださる皆様とともに、これからの時代に必要なIDEAS FOR GOODの新しいかたちを考え、対話し、ともにつくりあげる。そしてその過程自体のワクワクとやりがいを、皆様と分かち合う。そのために、私たちは今回クラウドファンディングに挑戦します。

このクラウドファンディングは、2030年、2050年のIDEAS FOR GOODにどんな記事を載せたいか、どんなコンテンツがあればワクワクするかを考えていく未来の編集会議でもあります。ここから生まれた新しいIDEAS FOR GOODからインスピレーションを受けた方々が、声を上げ、行動を起こし、社会を変革していく。そしてそれらの実践が再びIDEAS FOR GOODで記事となり、人々に新たなインスピレーションを生んでいく──このワクワクと挑戦の循環により、社会をよりよい未来へと前進させていくことが、私たち IDEAS FOR GOODのミッションです。

このクラウドファンディングに参加してくださる皆さん一人ひとりが、“ほしい未来”の編集部です。ぜひ私たちと一緒に、“危機”を“希望”に、“分断”を“つながり”に、編みなおしていきませんか?

IDEAS FOR GOODが今、問いかけたいこと
私たちは、世界中の希望あるアイデアや実践を届けることで、多くの方々と共に「より良い社会」の姿を模索し続けてきました。けれどもいま、私たちが大切に育んできたこの場と、ジャーナリズムそのもののあり方を揺るがす大きな変化の波に直面しています。

クラファン

①AI時代にメディアはどうあるべきか?
現代のメディアでは、アルゴリズムが刺激的な情報を優先し、じっくり読まれる記事や対話を生む言葉はかき消されがち。つまり、「アテンション・エコノミー」に翻弄されているのです。そして生成AIの登場は、この流れをさらに加速させました。前述のとおり、AIには差別や偏見を学習し、既存の格差を再生産してしまう危険性があります。

たとえば、社会の片隅にいる人々の声が十分に記録されていなければ、AIはその存在を「学ばない」まま未来をつくってしまうかもしれません。AIが発展し、膨大なテキストが生成され、それが広がれば広がるほど、声を上げられない人や拾われなかった言葉はますます不可視化され、社会の不平等はデジタル上でも固定化されるリスクがあります。私たちが危機感を覚えるのは、まさにこの点。だからこそ問いかけます。AIの時代に求められる、社会を“もっと”よくするメディアのかたちとは?

②それぞれの正しさにどう寄り添うか?
かつて「正しい」と信じられた基準やルールが、急速に揺らいでいます。あらゆる問題が複雑に絡まり合った“厄介な問題(Wicked Problem)”には、唯一絶対の解決策は存在しません。むしろ必要なのは正解を探すことではなく前提を問い直すこと。

正しく解くのではなく“正しさ”そのものを“解(ほど)く”ことで、新しい視点や対話を生み出し、未来の選択肢を広げていくことではないでしょうか。だからこそ問いかけます。いくつも存在している“複数形の”正しさに寄り添い、ひとつの正解を押し付けない“複数形”の未来に向けた対話を生み出すメディアのかたちとは?

③つながりをどう取り戻すか?
人と人が出会い、学び合い、信頼を育むこと。それは本来、誰もが享受できる営みでした。けれどもいま、効率やスピードを優先するシステムの中で、「つながり」を育むのに必要な時間がどんどん奪われ、つながりすらも商品化されています。

つながりが分断されればされるほど、人々は生活のあらゆる場面でお金に頼らざるをえなくなり、その分だけ資本主義は膨張していく仕組み。分からないことも不安なことも人ではなくAIに聞いてもらう時代。そんななかで、つながりはますます希少な「贅沢品」のようになりつつあります。現在の延長線上にある未来の世界で、私たちは幸せに暮らしているのでしょうか。だからこそ問いかけます。“分断”ではなく“つながり”をもたらし、“記事”ではなく“仲間”と出会えるメディアのかたちとは?

これらの問いに対する答えを読者の皆様とともに考え、対話し、新しいメディアのかたちをつくりあげていくために、私たちはこの挑戦を始めます。

IDEAS FOR GOODが目指す「新しいメディア」のかたち
では、具体的に何を実現していくのか。私たちがみなさんと一緒に起こしたい3つの大きな変革をご紹介します。

クラファン

①人を幸せにする“ちょうどよい”デジタルとは?コンヴィヴィアルなメディアの未来へ
デジタル技術、特にAIの進展は、私たちの社会のあり方を根本から変えようとしています。その中で私たちメディアもその存在意義から見直し、根本的な変革の必要性に迫られています。IDEAS FOR GOODが目指すのは、AIを排除するでも過剰に依存するでもなく、人間の創造力とAIの可能性が“ちょうどよく”補い合う、調和的で共愉的(コンヴィヴィアル)な関係です。これは思想家イヴァン・イリイチが「人間らしい技術との関係性」を表すために用いた言葉でもあります。

デジタルやAIがもたらす恩恵に対する感謝と尊敬を持ちながら、その中で周縁化され、こぼれ落ちていく大切なものを丁寧にすくい上げ、人とAI、さらには非人間の存在とともに未来を描いていく。IDEAS FOR GOODは、そのコンヴィヴィアルな関係性を模索し続けます。

②それぞれの“正しさ”に寄り添う。「解決策を見せるジャーナリズム」から「問いのジャーナリズム」へ
IDEAS FOR GOOD は、これまで課題ではなく解決策に光をあて、世界中のクリエイティブな社会課題解決アイデアを紹介してきました。しかし、多くの実践とは裏腹に、気候危機や分断はますます進み、AIの登場により未来の不確実性が増しています。 “正しさ”も “未来”もどんどんとぼやけていく時代のなかで、よりよい未来を照らし続けたい私たちは、何を「GOOD」だと言えばよいのか?

そう考え続ける中で、これまでの「課題・解決」という単純なアプローチではなく、そもそも私たちは「どんな未来がほしいのか」を問い、読者の皆様と一緒に考え、対話するところから始めることが重要だと考えるようになりました。すぐれた問いには、人々に世界に対する新たなまなざしやワクワク、対話やそれらを通じたつながりをもたらす力があります。私たちは、ただ答えを示すのではなく、もう一つの「正しさ」の背景にある “WHY(なぜ)”に耳を傾け、正しく解くのではなく正しさそのものを “解く(ほどく)”メディアへと進化します。

③ほしい未来をともに考え、ともにつくる。「読む」メディアから「編む」メディアへ
正しさを “解いた(ほどいた)”あとに大切なのが、もう一度それらを編み直す作業です。私たちが目指すのは、単に人が集まる場所ではありません。解決策ではなく「問い」が集まり、育まれていく、開かれた広場です。新しくなったIDEAS FOR GOODでは、その広場で読者の皆様とともに考え、対話し、一緒に現実を「ほしい未来」へと編み直していくプロセスそのものを共有します。

ほしい未来を考えるその旅路は、決してまっすぐな道のりではなく、寄り道も行き止まりもあるでしょう。しかし、その過程は同時に、問題ばかりに思えたこの世界の美しさや素晴らしさ、優しさと、出会い直す時間にもなると信じています。ポッドキャストやイベントなどを通じて、問いを中心に人々がゆるやかにつながる、身体性を伴った「場(ば)」という古くて新しいメディアのかたちを、皆様とともにつくりあげていきます。

この挑戦の先に、私たちが描く未来の風景
IDEAS FOR GOOD の使命は 、「こういう世界が見たかった」と心から思える場所を、これからも映し続け、つくり続けていくこと。

クラファン

優しさやワクワク、挑戦がめぐりあい、誰もが希望と安心に包まれて生きられる社会。それが、IDEAS FOR GOODがほしい未来です。その未来は、私たちだけでつくることはできません。ぜひ皆様の力を貸していただき、ともに “危機”を “希望”へと編みなおしていくことができれば嬉しいです。

今回私たちは、目標金額とは別に「目標人数1,000人」という大きな挑戦を掲げています。それは「ほしい未来」をIDEAS FOR GOODが提示するのではなく、読者のみなさんと一緒に考え、対話し、つくりあげていきたいからです。目指す「1,000人」は、最初の“共同編集者”の数。金額の大小は関係ありません。支援してくださる一人ひとりの想いや視点が加わることで、メディアはより豊かに、社会にとって意味ある存在になれると信じています。

──さまざまな問いを手がかりに。気候危機に立ち向かう風景、分断を超えて問いを分かち合う広場、やさしさが循環する経済。そんな未来の風景を、みなさんと一緒に描いていきたいのです。

IDEAS FOR GOODの挑戦は、まだ小さな一歩にすぎません。けれど、この一歩が「ほしい未来」と「残したい声」を育み、やがて次の世代へとつながっていくことを信じています。少しでも気になった方は、ぜひページをのぞいてみていただけたら嬉しいです。

IDEAS FOR GOOD 2.0。危機を希望に。読者とともに「新しいメディアのかたち」をつくりたい

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Life Hugger 編集部

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