環境に配慮した素材を使っていたり、洋服をリユースやリサイクルしたりといったサステナブルな取り組みが盛んになっているファッション業界。そんな中、国内最大級のファッションリコマースサービス「ブランディア」が、廃棄衣料を原料にしたボードのPANECO®を壁面や什器に実装した新店舗を吉祥寺にオープンさせました。
PANECO®は、株式会社WORKSTUDIO(以下 WORKSTUDIO)が作成する、廃棄衣料品を原料としファッションロスを解決するリサイクルボードです。今回は、ブランディア吉祥寺駅前店を取材し、PANECO®を使用した店内を見学しながら、ブランディアの取り組みを詳しく聞いてきました。
ブランディアでは月に4トンもの廃棄衣料が発生
ブランディアは株式会社デファクトスタンダードが運営する、ハイブランドからカジュアルブランドまで約7,000ブランドを取り扱っている宅配買取サービスです。累計利用者数は300万人以上。宅配買取のほかにも、東京では新宿や池袋、六本木や恵比寿など、大阪では梅田で店舗買取も行っています。
ブランディアに持ち込まれて査定される衣料品の点数は1日に約1万点。しかし、これらすべてが買取できるわけではなく、タグが切り取られていたり破損があったりして値段がつかないものも少なくありません。
買取できない商品はユーザーに返却か、ブランディアに引き取ってもらって廃棄かを選択できますが、多くのユーザーが廃棄を選択しています。その結果、査定数の6~7%、月間で少なくとも約10,000件以上の商品が廃棄となっていました。重さにすると、なんと約4トン!
こうした現状に危機感を覚えたブランディアは、数年前からSDGsの取り組みを強化しています。そのうちの施策のひとつが、今回新オープンしたブランディア吉祥寺駅前店です。
廃棄衣料を原料にしたリサイクルボード「PANECO®」を内装に
ブランディア吉祥寺駅前店は、店舗買取を行うという点では他の店舗と同じですが、内装に大きな違いがあります。入店してすぐ右手側の壁には、さまざまな繊維を原料にすることができるサステナブルな循環型繊維リサイクルボード「PANECO®」が使われています。
このPANECO®は特許技術によって作られており、衣料品を細かく裁断し、少量のバインダー(のりのようなもの)を混ぜてギュっと圧縮させて作られたボードです。家具や小物、内装資材など様々な用途に活用することができます。そしてPANECO®を使用した什器などが廃棄になる場合も、再度PANECO®にリサイクルすることができるという非常に循環性に優れた資材です。
近くで見ると、衣料品の破片の色がわかります。例えばモノトーンな色合いに差し色のピンクや黄色が入っていて、リサイクルボードと言われなければ普通におしゃれな壁紙に見えますね。
ハンガーやコースターなどにも活用できます。
衣料品を圧縮しているだけなので、現段階では防炎加工がされていないこのPANECO®。そのため、建物の内装に使用する際にはその建物の広さや使用面積に条件があります。ブランディア吉祥寺駅前店は、同線の広さや築年数などの条件が揃ったことと、設計者である株式会社トラストが消防と話を詰めて諸条件をクリアしたので実装することができたそうです。
PANECO®へと生まれ変わらせる取り組みにより廃棄衣料の約60%が削減
ブランディア吉祥寺駅前店では壁のほかにも、カウンターや2階のテーブルなどにこのリサイクルボードが使われています。これまでにも什器などでPANECO®を使用した事例はありましたが、内装としての使用例は「ブランディア吉祥寺駅前店」が初なんだとか。
取組みがどうなっているのかを掘り下げると、まずブランディアが、自社の廃棄衣料をWORKSTUDIOへ無償提供します。WORKSTUDIOがその衣料品を使って、PANECO®を作り、それを建材に生まれ変わらせます。PANECO®で作られた建材や内装材をブランディアの店舗に活用するというサイクルです。
WORKSTUDIOには、ブランディアから恒常的な廃棄衣料が供給されるので、安定的なPANECO®の生産が可能になります。まさに、それぞれがWIN-WINとなる循環型の取り組みとなっているのです。そしてこの取り組みより、ブランディアでは4トンもあった廃棄衣料の約60%が削減される見込みだそう。
PANECO®は廃衣類・廃レザー90%を原料にしたものと、廃衣類・廃レザー50%と再生木材40%を原料としたものの2種類を展開しています。PANECO®は、さまざまな衣類を使っており表情が豊かなので意匠材として使うことができます。また、再生木材を使ったものは加工性に優れていて一定の強度があるので、構造材としても活用することができます。ブランディアの取り組みが広がり、PANECO®がさまざまな什器や内装に使われていく未来になれば、ファッションロスも大幅に削減されていくのかもしれません。
ブランディア「廃棄0プロジェクト」とは
ブランディアを運営する株式会社デファクトスタンダードの代表取締役社長、仙頭健一さんによると、ブランディアではアパレルリユースを通じたSDGsへの貢献を幅広く行っているそうです。
昨年には、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」とコラボレーションをし、ファッションアイテムを自治体に寄付ができる「断チャリプロジェクト」を開始。第1弾は新型コロナウイルスの被害が甚大な都市部の自治体への応援を中心に、東京都の世田谷区、港区、中野区、羽村市、三鷹市、千葉県の南房総市、埼玉県のさいたま市の7自治体を対象としました。
「ブランディアチャリティプログラム」は、ブランディアの買取金額をユーザーがさまざまな活動に寄付できる仕組みです。生活の厳しい子育て家庭に定期的に食品を届ける「こども宅食応援団」や青森県から福島県におよぶ太平洋岸にガレキを活用して盛土を築いて森を育て、巨大津波から命を守る森の防潮堤を築く「森の長城プロジェクト」など、寄付支援先を選べるので、納得感や満足度の高い社会貢献ができることが特徴です。
また、2020年4月からは「廃棄0プロジェクト」をスタート。廃棄衣料に素材としての価値を見出し、廃棄をゼロにしてファッションロス問題の解決を目指して活動を続けています。これまでにも、服や雑貨のリメイク素材として廃棄衣料を提供し、それらの活用を推進してきました。そうした中で、より抜本的な解決と削減方法を模索して見つけたのが、今回のPANECO®だったそうです。さらにブランディアでは、使われなくなった服や雑貨、ブランド品の次のステージとして、次世代のファッション業界を担う学生に向けに廃棄衣料を寄付し、学生たちの教材にしてもらう取り組みも行っています。
世の中には衣料品をはじめとして新しいブランド品が次々と生み出されています。一方で、利用されて行き場を失った衣料品やブランド品たちも数多く存在します。
仙頭さんは「ブランディアでは循環型社会への貢献と日本のリユース文化の世界発信に挑戦したいと思っています。2030年までに廃棄0が目標です!」と語っていました。日本から世界へ、PANECO®を実装したブランディア吉祥寺店のように、ファッションロスのスタンダードが広がっていくと、廃棄衣料が0になる未来も遠くないかもしれません
【参照サイト】ブランディア買い取り申し込みサイト
【参照サイト】ブランディア公式サイト
【参照サイト】ブランディア吉祥寺駅前店
【参照サイト】PANECO®
【関連ページ】廃棄衣料をアップサイクル!ブランディアx大妻女子大学染色デザイン研究室
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