近年、日本でもお墓に代わる埋葬法を選ぶ人が少しずつ増加しています。そんな中、2023年11月9日(いい供養の日)に始まったのが「深海葬」です。今回はこの新しい埋葬法について、詳しくお伝えします。
「深海葬」とは
「深海葬」とは、遺骨をパウダー状にしてクリオネ型の骨壺「クリオール」に納め、駿河湾の海底2,000mに安置する埋葬サービスです。「クリオール」は、沖縄県産のクチャ(泥岩)で作られているので、100%天然由来。1週間程で自然に還ります。費用は1,097,800円(税込)からです。
「深海葬」を始めた理由は?
「深海葬」を企画しているのは、デザイン会社のモンディアル株式会社です。代表取締役の小泉賢司さんに、なぜ深海葬を始めたのか背景をお聞きしたところ、こんなお返事をいただきました。
自然葬が増えてきている背景には、核家族化や生涯独身率の高まり、お墓そのものを守っていく後継者の不足、お墓の土地問題がありますが、何よりも死や弔いに関する考え方の変化があると思っています。すべての宗教の根底にある「人間は自然の一部」という考え方に共感し、自然葬を選ばれる方が多くなっているのではないでしょうか。
こうした自然葬の増加を目の当たりにし、小泉さんは自身の生まれ育った静岡県沼津市に思いをはせました。沼津市は、日本屈指の深海である駿河湾に面しています。
「ここは目の前に芳醇な駿河湾が広がり、振り返ると霊峰富士が見える場所です。そんな場所は全国探してもそうそうないだろう。ここを最期の場所としたい人はきっといるはずだ」と思いました。それで、このような埋葬サービスを展開したいとの考えに至りました。
そして小泉さんは2021年に実現に向けて準備を始め、2022年7月に商標登録を完了。2023年11月9日(いい供養の日)にニュースリリースを発表し、深海葬のサービスを始めました。現在は「50名ほどの方にお問い合わせをいただき、契約に向けた最終段階となっている」とのことです。
問い合わせをいただいた方が深海葬を選んだ理由としては、以下がキーワードとなっています。
- 自然に還る
- 輪廻転生
- 富士山が好き
- 墓じまい
- 海が好きだから
- デジタル墓標
実際に「深海葬」を実施したことは「まだない」とのことですが、2024年4月中に1名を埋葬する予定だそうです。
「デジタル墓標」を通じて、埋葬後もつながる
モンディアルの深海葬は、埋葬して終わりではなく「デジタル墓標」がある点が画期的です。このシステムには、小泉さんの個人的な体験と想いが込められています。
私は、17歳の時に母親を亡くしています。それから今までの人生で片時もそのことを忘れたことはないですし、死後40年近く経っていますが未だ喪失感の真っただ中にいると言えます。それで、私と同じように喪失感から抜け出せずにいる方々に向けて、新しいサービスを作りたいと考えるようになりました。
そんな中、仕事で海外を回っていた時にメキシコの死者の祭りを体験し、メキシコ人の死者との付き合い方と死後の世界に対するポジティブな考え方に感銘を受けました。日本でも東北地方に残る新盆の文化は、ある意味華やかですよね。そうした体験から「深海葬」のサービスは埋葬しておしまいではなく、死後に続く世界を可視化したいと考えました。
そして、小泉さんは「いつでもお参りができ、残された遺族と旅立った故人とが語り合える場所」として、Googleマップ上で深海葬を実施した地点にピンが立つ「デジタル墓標」を作ることにしました。今春からは、そこから深海葬をした方のアバターが出てきて、ご遺族と対話ができるようになる予定です。
2024年5月から沖縄でも「深海葬」を実施
今後は埋葬場所も増やしていく予定で、直近では第二弾として2024年5月から沖縄で「深海葬」のサービスを始めるそうです。
日本各地の海の底に還っていく「深海葬」。今後の選択肢としてぜひ考えていきたい埋葬法です。
【参照ページ】モンディアル株式会社「深海葬」公式サイト
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曽我 美穂
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