食卓から魚が消える?MSCジャパン「危機迫る水産資源ー将来の世代まで残していくにはー」セミナーレポート

“小さな「海のエコラベル」を選んで、大きな海を守ろう”キャンペーン開催中

2021年6月1日にMSCジャパン主催のオンラインプレスセミナー、「危機迫る水産資源ー将来の世代まで残していくにはー」が開催されました。本セミナーは、国連が定めた6月8日の「世界海洋デー」に合わせて企画されたもので、持続可能な漁業で獲られた水産物の証である、MSC「海のエコラベル」の認知向上を目的としています。

この記事では、セミナーを通して学んだ、未来の豊かな水産資源を守るために日常生活でできることについてご紹介します。

登壇者プロフィール

ココリコ 田中直樹氏

ココリコ 田中
MSCアンバサダー。芸能界随一の「海洋生物好き」として知られる。2018年にMSCアンバサダーに就任し、海洋資源の保護について、精力的に発信を続けている。

大石敦志教授

日本大学 生物資源科学部 食品ビジネス学科 教授。日本大学大学院農学研究科博士後期課程修了後、三重大学生物資源学部助手、日本大学生物資源科学部講師、准教授、教授。現在、日本フードシステム学会事務局長。

石井幸造氏

一般社団法人 MSCジャパン
プログラム・ディレクター。食品関連会社勤務、開発途上国でのコンサルティング業務を経て、2007年5月のMSC(海洋管理協議会)ジャパン開設時より現職。プログラム・ディレクターとして日本におけるMSC認証やMSC「海のエコラベル」付き水産物の普及に努める。

鈴木夕子氏

一般社団法人 MSCジャパン
広報担当マネージャー。民間企業やNPO法人の広報職等を経て、2019年11月より現職。MSC認証やMSC「海のエコラベル」の認知・啓発活動に努める。

未来の豊かな水産資源を守るために日常生活でできること

1. MSC認証とは?

MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)は、将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際非営利団体です。持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC認証は、世界で広く認知されており、最新かつ確実な科学的根拠に基づき策定されたものです。

漁業がこの規格を満たすためには(1)水産資源が持続可能なレベルにあり(2)漁業による環境への負荷が抑えられており(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、独立した審査機関による審査を通じて実証することが求められています。MSCの厳格な規格に適合した漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それが「海のエコラベル」です。

「海のエコラベル」のついた水産品は世界約100カ国で45,000品目以上、日本では約1,000品目が承認・登録されており、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、西友、ライフ、マクドナルドなどで販売されています。

海のエコラベル
海のエコラベル

2.水産資源に関する意識調査レポート

セミナーに先立ち、MSCの日本事務所であるMSCジャパンは、全国20代~60代の男女1,000人を対象に、水産資源に関する意識調査を実施しました。調査結果から、多くの人が、天然魚の減少や魚介類の値段上昇を感じながらも、この先も変わらずに日常で魚を食べられるという認識を持っているという実態が浮き彫りになりました。

また、「海のエコラベル」を知らない人は8割以上で、ラベル付きの製品を選ぶことが、サステナブルな漁業と未来の水産資源を守ることにつながるということが、ほとんど認知されていないという結果となりました。

3.ずっと魚を食べ続けることができる未来はある?

続いて、日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科教授、大石敦志さんの基調講演が行われました。消費者の品目別価格弾力性をもとに漁獲量の変化による価格予想を行ったところ、今から約30年後の2050年には、2000年代の始めより30~50%ほど魚介類の価格が上昇するという予測結果が計測されました。

“小さな「海のエコラベル」を選んで、大きな海を守ろう”キャンペーン開催中

大石教授は、MSC認証ラベルについて「未来の水産資源危機について正しく知ってもらい、どう行動すべきかを考えるきっかけになってほしい」と述べ、講演を締めくくりました。

4.次世代の子どもたちのためにできること

“小さな「海のエコラベル」を選んで、大きな海を守ろう”キャンペーン開催中

次に、ココリコの田中氏、大石教授、石井氏によって、未来の水産資源を守るために消費者ができることについての、トークセッションが行われました。

水産資源の現状について

田中氏:近所で40年魚屋を営まれている方から、年々魚の数が減っていて、とくにこの2~3年はよくない状況だと聞きました。取れたとしても、いいサイズ、おいしい魚が少なくなっていて、サイズダウンして卸さなければならない状況もあるとおっしゃっていて、毎日魚と向き合って過ごしている方のお話に、危機的な状況を感じました。

石井氏:過度な漁獲量が毎年増えていて、漁獲量に余裕がある魚は全体の6%ほどです。本来魚は再生可能ですが、適切な管理が必要だと思います。

田中氏:余裕がある魚種は6%しかいないという数字に驚きました。1年で復活するかというとそうでもないし、何年もかかる魚種もあります。本当に、いますぐにどうにかしなければいけない問題だと思います。

海を守るためにできること

石井氏:まずは持続可能な漁業を認証し、MSCのエコラベルを付けることによって、消費者にそうした商品を選んでもらいたいです。大切なのは、消費者にMSCラベルの存在を知ってもらって選んでもらうことだと思います。

大石教授:海のエコラベルはとてもよい取り組みだと思います。消費者は、海の資源を守る、持続可能な漁業を守るといっても具体的に何をしたらいいかわからないと思います。そういう時に、エコラベルの商品を買うだけで、自分たちが社会に貢献しているという意識を持つことができます。

田中氏:僕がMSC認証の商品を購入するのはマクドナルドのフィレオフィッシュ、セブンイレブンの辛子明太子などで、近所のコンビニやスーパーに並んでいる日常的な食品です。何か特別なお店に行くわけではないですし、もちろん、エコラベルがついた商品が特別高いというわけでもありません。みなさんにも身近な店で見つけたらぜひ手に取って欲しいです。商品があるのに気づいていない人も多いので、まずはこのマークを知ってもらいたいです。

水産資源を将来に残していくために何が必要なのか

大石教授:ひとりひとりの行動が大切です。小さいことでも、大勢集まるとすごい力になります。いかにMSC認証のファンを増やしていくかが大切で、その工夫が必要だと思います。

石井氏:日本人にとって当たり前の魚。魚が減っていると聞いてもぴんとこない人が多いので、まず、現状を知ってもらう必要があります。MSC認証の製品も増えてきていますので、消費者の皆さんに意識して探して欲しいし、選んで欲しいです。それが水産資源を守る行動につながると思います。

田中氏:このような海の状況であることと、MSCジャパンを知ってもらうということが大事だと考えています。次世代の子どもたちに今と同じように魚を食べて欲しい。そのために魚の命をつないでいきたい。自分の家族を守りたい気持ちと同じような気持ちで、海を守りたい。こういう場や動画を通して、もっとMSC認証の存在を広げていきたいと思います。

5.小さな「海のエコラベル」を選んで、大きな海を守ろうキャンペーン

海のエコラベルキャンペーン

MSCジャパンは、 MSC「海のエコラベル」を選ぶことが持続可能な漁業を支え、水産資源や環境を守ることにつながることを伝えるため、マックカードなどが当たるキャンペーンを開催中です。

キャンペーン期間

第1弾:2021年6月1日(火)12:00から6月30日(水)23:59
第2弾:2021年7月1日(木)0:00から7月31日(土)23:59

応募方法

①MSCジャパンの公式Twitterアカウント「@MSC_Japan」をフォロー。
②以下のキャンペーンツイートの、MSCアンバサダー、ココリコ・田中さん出演動画を見る。
MSC特殊調査員・田中直樹 日本のお寿司、将来どうなる?
③3つある選択肢のどれかを選んでツイートすることで応募完了。

その他詳細はキャンペーン特設ページをご覧ください。

編集後期

最近、魚の値段が高くなったと感じていましたが、ここまで、水産資源が危機的状況になっているとは思いませんでした。このままでは、近い将来、魚を食べることができなくなるかもしれません。いま、私たち一人ひとりが、持続可能な商品を選べば、持続可能な漁業も拡がっていきます。

海の未来、そして地球の未来を守る為、持続可能な漁業を示すMSC認証の商品を購入してみませんか?小さな一歩が、海の未来を大きく変えることになるかもしれません。

【参照サイト】Marine Stewardship Council
【参照サイト】小さな「海のエコラベル」を選んで、大きな海を守ろうキャンペーン
【関連サイト】MSC認証

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Life Hugger 編集部

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